刑務所の話ばかりしてきましたが、たまには違うお話をさせてください。
今回は拘置所。懲役の入口に戻ってみます。
「とばっちりを受ける長期受刑者」というマニアックで、
たまにはマジメな話です。
まず、
拘置所は「裁判で起訴された人がブチ込まれる所」のイメージが強いハズ。
が、裁判で判決が出て、
刑が確定するのは刑務所ではなく
「拘置所」
つまり
受刑者のスタートは拘置所で迎えることになるんです。
1．はじめての懲役作業
裁判で刑が確定しても、いきなり刑務所に送られるワケではありません。
まずは拘置所にて、刑務所に送られるまで待機するコトになります。
これを
「移送待ち」と呼びますが、何とも
中途ハンパな立場でして・・・
（「
はじめての懲役(6)・・・早く刑務所に行きたい？」をご覧ください）
刑務所ではないけれど、懲役は始まっているから
懲役作業はアリ。
けれども刑務所ではないから、懲役作業をする
工場はナシ。
食う、寝る、作業まですべて、一日中同じ舎房の中に閉じこもりっきりです。
そして、
懲役の作業が刑務所と違って、
ひたすら単純・地味。
一番ムズカシイ作業が、
「紙袋折り」というレベルですから！
紙袋折りとは、お店で入れてくれるあのヒモ付きの袋を作ること。うーん、地味。
他の定番作業をご紹介しますと・・・
レジ袋にチラシを入れる
ハンガーに貼り付いたシールをはがす
うーん、単純。
こんなのでホントに懲役作業と言えるのか？
仕事と言うより、
老人の痴呆防止の治療じゃないかと疑います。
もう、
誰でもできる作業なワケです。
が、コレすらできない受刑者もいるので、
別メニューも用意されています。
短いヒモを結ぶ、それだけの作業。
お利口なチンパンジーならできるだろ？というレベルだけに笑えません。
作業はノルマがあるワケでもなく、恐ろしい懲役の先輩がいるワケでもない。
ココは刑務所ではなく、
まだ拘置所。作業はラクラクです。
こりゃいい、気楽だな～と思っていたら、
甘かった。
あまりの単純作業で、
2～3日で飽きてしまうのです。
一日が長くてたまらん！
なるほどコレが「懲役」という意味か！ 必ずや
退屈地獄に苦しめられます。
「移送待ち」がいつまで、とわかっていれば、まだラクなんですが・・・
移送待ちが２週間も過ぎると
「これが永遠に続くんじゃないか」と不安になり・・・
いつの間にか
「さっさと刑務所に行って落ち着きたい」と思うようになります。
あれだけ「絶対に行きたくない！」と思っていた刑務所なのに、行きたいなんて…
そしてこの
「移送待ち」にも、
受刑者によって大きな差が出ます。
まぁ、
長期受刑者はこの点でもツイてないんです。
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2．早く刑務所に送ってくれ！
「移送待ち」の期間は、人によってまちまち。
いつまで続くかわかりません。
刑の短い人は早く決まる傾向で、数週間で刑務所に送られてしまいます。
が、
刑の長い人は、なかなか決まらず、半年経ってようやく送られる人もいます。
異常に長い「移送待ち」。半年も拘置所で待たされる意味が分かりません。
受け入れる刑務所が予約で一杯とか、空きがないとも思えませんでした。
受刑者のクセに刑務所ではなく、拘置所。
なんと宙ぶらりんな存在。
そんなワケで、長期刑の受刑者はなかなか送られる刑務所が決まりません。
「どうせ10年、20年と刑務所だから、チンタラ送っとけ」な感じでしょうか？
どこに送られるかもわからず、放置プレイ。おしおきの一環ですかね？
当の長期受刑者は、
初めは退屈だったのが不安になってくるようです。
「早く刑務所に送ってくれ！」と叫んでいましたね。
ガマンできず毎朝、巡回の刑務官様に、移送のことを尋ねる人も出てきます。
（あ、もちろん優しそうな刑務官の時だけ選んで、尋ねるんですよ。）
「おやっさ～ん、自分の移送はまだですか？」
―――あぁん？まだだ。明日はねぇな。
「いつぐらいですかねぇ？それぐらい教えてくださいよ」
―――そんなの言えねぇ。まぁ、今月はねぇな。
「えぇっ！もう移送待ちで４ヶ月になりますよっ」
―――いやぁ、長いと半年以上待たされるヤツもいるから心配ねぇよ。
「じゃあ、どこに飛ばされるのかくらいは、教えてくださいよ～」
―――それを調整しているんだから、わかるワケねぇだろ。
「自分は再犯でロング(長期刑のこと)
だから、宮城っすよね」
―――あぁん？LB(再犯の長期刑のこと)
だったか、オメェ。
「東の受刑者でLBだと、宮城じゃないっすか？」
―――いや、今はアテにならんぞ。
「ロング(長期刑)
なのに、フツーのB刑務所に行かされるんですか？」
―――それもあるけれど、オメェは岐阜とかあり得るな。
「はぁ？どうして西に行くんですかっ？」
―――ロング、しかもLBは全国の刑務所が対象になってるぞ。
「そんなぁ・・・」
実は、長期受刑者に限っては、送られる刑務所の選択肢が増えています。
今までのお決まりの「長期刑の刑務所」以外にも、
例外で送られるケースが多い。
短期刑の刑務所や、
まったく別のエリアの刑務所に送られたりするんです。
３つくらいの選択肢だったのが、
７～８の選択肢に増えた感じ。
どうして長期受刑者が、イロイロな刑務所に送られるようになったのか？
実は、
厳罰化が進んだ影響なんです。
弁護士も、刑務官様もこの「厳罰化」は口をそろえて言いますね。
「昔と比べたら、量刑が２倍、３倍になった罪名もあるな」
つまり現在は
カンタンに懲役10年オーバーしてしまうワケでして・・・
その結果、
長期刑の刑務所が受刑者を収容しきれなくなります。
そのため、短期刑と長期刑でキッチリ仕分けしていたのを方針転換するしかない！
今まで短期刑の刑務所も、仕方なく長期刑の受刑者を収容するようになったワケ。
ある初犯の短期刑務所では、10年ほど前から長期刑の受刑者を受け入れ開始。
すると、
あれよあれよと長期刑の受刑者が増えてしまい、全体の3分の1以上に！
こうなるともう、
短期刑務所だか、長期刑務所だか区別つきません。
長期刑の受刑者は、何せ懲役10年以上なので、一度入ると出所しません。
短期刑は入れ替わりが激しいですが、
長期刑は「溜まる」一方。
そりゃあ、どんどん増えちゃいます。
そんな
厳罰化の影響で、長期刑の受刑者はどこに送られるのか、読めない！
「別にどこの刑務所に送られようと、変わらねぇだろ？」と、思いますか？
いえ、
刑務所も当たりハズレはあるんです。
ましてや10年以上も過ごす刑務所ですから、そこは肝心です。
3．刑務所によって大きな差が出る
実は
刑務所によって、処遇・環境が異なるので、大きな差になります。
やたらと
規則が細かく、キビシイ刑務所もあるのは懲役たちの常識です。
つまり、
公平じゃないんです。
⇒
メシがやたらとマズいと評判な刑務所には、行きたくありません。
⇒建物が古くて、すきま風だらけなら、
冬は死にそうになります。
⇒
メチャクチャ遠方なら、面会など来てもらえません。
1年ならガマンできますが、
10年以上となると、これらは死活問題です。
同じ懲役15年でも、キビシイ施設なら、
倍以上にツラいでしょうしね・・・
こうして
長期刑の受刑者は、どこに送られるか気になるワケです
が、しかし、
長期刑は「どこに送られるかわからない」という。
たしかに、後から調べても、
長期刑は全国に散らばるケースが多いのです。
これから長期刑の方、ご家族、どこに飛ばされるかわかりませんので、ご注意を。
「そこんとこ、どうにかならんのか!?」
お気持ちはわかりますが、
送られる刑務所を自分で決めることはできません。
が、
イヤな刑務所を避けることはできるようです。
次回、そんな
マニアックな定番ワザをご紹介します。
とは言っても、環境の良い刑務所に行けるかどうかは「運しだい」ですが。
逮捕、裁判でお困りの状況の方は、ひょっとしたら役に立つかもしれません。
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2016-09-21 17:00
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共通テーマ：日記・雑感
この前風呂で親指を立ててた受刑者がシャバの銭湯で元受刑者だとバレてしまったとブログに書かれてましたが、その受刑者はきりたんぽさんに話をした時点では再犯ということですか？
再犯と初犯は同じ刑務所に行くことは基本的には無いと書いてあったので、少し疑問に思いました。
by お名前（必須） (2016-09-21 19:13)
初犯の刑務所には「第1回目の実刑を喰らった者だけが行く」ワケではありません。
以前、別の記事にも書きましたが、前回の刑の終了から10年か15年以上経っている、まったく別の罪名、というような条件の受刑者は「準初犯」という扱いになります。
準初犯は初犯の刑務所に来るのです。
ですから、フロで親指立てる話をしたジジイ受刑者は、厳密には再犯にも拘らず初犯刑務所にいるのです。
以上です。
by きりたんぽ (2016-09-21 19:35)
紙袋折りは映画「刑務所の中」のハナワさんが、懲罰前の取り調べでやってましたが、レジ袋のチラシ入れや、ハンガーのシール取りなんてのも刑務作業なんですか！
確かに工賃がタダみたいな受刑者に任せる仕事としてはうってつけのような気がします。
１枚１０銭くらいなもんなんでしょうかね？
逆に言うと、こういう手間がかかる業務は、企業の方も少しでも経費を安くしないと儲からないんでしょうね。
今後、紙袋やレジ袋は、少しでも大事に使おうと思います（笑）節約にもなりますしね。
by 忍者福島 (2016-09-22 18:34)
忍者福島さん、こんばんは。
コメントをくださりありがとうございます。m(_ _)m
「刑務所の中」でも出て来ましたね～
紙袋折りは定番中の定番ですが、こんなモンもあるんですよ～
新米の受刑者に支払われる「作業報奨金」は1ヶ月で800円程度と激安ですが、刑務所が外部業者からもらう「工賃」はシャバより多少安い程度と聞いております。
この差額を刑務所運営に当てているワケです。
実は受刑者は、食費程度は余裕で稼いでいます。
刑務所運営が赤字、国の予算を使うのは「刑務官様の人件費が高い」からです。
別に文句を言っているのではなく、事実です。
お店でもらうオシャレな紙袋も、懲役たちが怨念をこめて折っていると思うと、何だか気が重くなります。
またコメントをお待ちしております。
いつもお読みくださり、感謝です。
by きりたんぽ (2016-09-22 18:44)
こんな活きた知識を与えてくれる刑務所関連サイトは初めて読みました！笑
懲役生活は、基本的にはただ老いるだけの無駄な時間に他ならないとは思いますが、
少しでも後の人生に役立たせるために、どのような刑務所生活を過ごせばマシになるとお考えになりますか？職業訓練以外で。
かのホリ○モンは懲役中に1000冊もの本を読破したと言ってますが、やはり読書しまくること一択ですかね。
無料で資格勉強もできるみたいですし。
起業する人とかならば、刑務所でコミュ力を否応なしに磨けるという点が役に立ちますかね。
by お名前（必須） (2016-09-23 05:47)
少しはお役に立てているのなら、うれしいです。
おっしゃる通り、懲役生活で過ごす時間は「ムダ」です。
こんなところにブチ込まれる時点で、人生終わってます(笑)。
それでもこじつけて「有意義な時間の過ごし方」を考えるとすれば…
まずは読書ですが、仕事につながる、カネになる読書を心がけないとダメでしょう。時間があるからと言って、自分の好きな本をただ漫然と読んでいても、それはヒマつぶしです。
資格の勉強をする人も多いですが、その資格で食っていけるのか、その資格で就職や仕事をもらえるか、考えていない人が多い。カネにもならない資格の勉強を何となくやっている人が多いです。
まぁ「自分はマジメにやってます」と刑務所側へアピールするためにやっている人もいますが…
懲役生活において、ウマくやっていくというコトは否応おなしにコミュニケーション能力が鍛えられます。
あまりに幅広い人間がいて、シャバと違い避けることはできず、彼らとウマくやっていかなければなりません。
私が思うに、コレが一番出所後に役立っている気がします(笑)。
by きりたんぽ (2016-09-24 08:29)
長期の方のご家族も
何処に行くか わからないなんて
決まるまで落ち着かないですね…
物凄く遠くだと、気持ちが折れそうな
10数年、社会的には存在しないような
お務め生活。出てきてからの社会復帰が
心配になります。
待っていてくれる人がいればいいですが…
彼も懲役生活始めてます。
落ち着いたら面会に行く予定ですが
友人 なので、会えるかどうか…
(登録済みです。)
by やぎこ (2016-09-25 11:09)
やぎこさん、こんにちは。
コメントをくださり、ありがとうございます。m(__)m
オカシイというか、困ってしまうのは、施設によって処遇の差が結構あるということです。
ご心配だと思われる「面会」についても同様です。
身元がハッキリし、登録しさえすれば、基本的には誰でも面会できる施設もあります。
一方で、親族以外は面会させない施設もあります。
各刑務所の規則の運用次第、つまりは刑務所長の考え次第で決まってしまうようです。
公平・公正のハズの場所なのにこの差はオカシイんですが、文句を言っても始まりません。
やぎこさんが面会できるような施設であることを祈っています。
by きりたんぽ (2016-09-25 11:19)
受刑者を税金泥棒扱いしますが、全く刑務官に矛先が向かわないのはおかしいですよね。
カンカン踊りとか、税金泥棒だと思います。
不要な業務を減らして省力化して、その分別の仕事をやればいいんですよ。
冤罪で刑務所に入る人が稀にいますし、アホみたいなイヤがらせはやめるべきです。
by ローズ猫 (2016-09-25 15:03)
ローズ猫さん、こんにちは
コメントありがとうございます。
たしかに刑務所はムダに人手が必要になっています。慣例でしか動かない所なので、必要ないと思われても続けているのが現状です。
万が一何かあったら、世間から刑務所は責められますから、それを極端に嫌がります。
だから不必要な業務や人員が削減されない…
これは当然の反応ですし、仕方ないと思います。
またオカシイと思っても、受刑者、元受刑者の立場では文句は言えませんね(笑)。
正直、仕事の内容は薄く、だからこそＰＦＩ刑務所(半官半民)が出来るのだと思います。
by きりたんぽ (2016-09-25 16:27)
拘置所で既決囚になってる関係者に面会に行きたいのですが、身分証明書無しで偽名は可能ですか？
事件関係者なのでバレたくないのです。
警察と拘置所との情報共有はどんなもんでしょうか？
by 匠 (2018-01-11 07:39)
警察と拘置所の情報共有についてはわかりません。
面会の際は、身分証明書の提示が必要なことは確かです。
身分証明書なしで面会はできないハズです。
by きりたんぽ (2018-01-11 09:55)
迅速な返答ありがとうございます。
東京拘置所は必要ないと言ってた人が居たので質問させていただきました。
全責任を自身で負ってくれた方なので刑務所に移送になる前に会っておきたいのです。
弁護人を通しても意思疎通が上手くいかないのでイライラしてしまいます。
顔を合わせて短い雑談の中で気持ちを伝えたいのですが、キリタンポさんならどうしますか？
by 匠 (2018-01-11 21:46)
弁護士を通しての連絡・やり取りはほぼムダと考えた方がいいです。このような目的に弁護士は使えません。親身にもなってくれません。
どうしても会っておきたい、という気持ちがあるならば、会っておけばよろしいのではないでしょうか。
刑務所に移送されてしまうと、未決の拘置所より面会条件が厳しくなります（刑務所によっては親族以外は面会できない事態になります）。
by きりたんぽ (2018-01-12 02:46)
返信ありがとうございます。
建前ではなく正直な返答に感謝します。
by 匠 (2018-01-16 07:09)