このところ、刑務所での手紙の話をさせていただいております。
外の世界から隔離された懲役たちにとって、手紙はありがたいモノです。
外の世界とのつながり、「生きている」ことを実感でき、力が与えられます。
決して大げさではなく、一通の手紙で落ち込んだり、はしゃいだりしました。
温かいコトバが綴られた手紙には、何度も目を通し、その度に涙を流したものです。
手紙はいつでも、誰からでもうれしいモノ、と思っていました。
ところが、
中には決定的に「絶望する」手紙もあるらしいのです。
今回は、希望の手紙ではなく、そんな
「どん底に叩き落とす」手紙の話をします。
E.届かない方が良い手紙もあります
2.最後の最後で拒否するなんて!
Sさんは40代後半の、見た目は強面だが温厚なオジサン。
自称タタキ(強盗)で5年半の懲役を喰らったらしい。
懲役たちになぜか多い、歯並びが悪く、歯もスカスカというSさん。
そんなスカスカな歯からツバを飛ばしながら、ある日Sさんは興奮していた。
「やったよ!とうとう自分にも来たよ!」
―――どうしたんすか?誰か面会にでも来てくれたんすか?
「いやぁ、カリメン(準備面接)だよ。やっと来た!」
―――おおっ!おめでとうございます。仮釈放へ確変モードですね。
「このまま無事にいけば、1年は仮釈もらえるよ~」
―――順調じゃないですか!まあまあ仮釈も、もらえそうですね。
「やっとだよ。この4年間は長かったからなぁ。早く出たいよ」
以前、仮釈放の記事でお話ししましたが、
刑務所から出所するには2通りある。
①刑の満期日まで、懲役を勤めて出所する
②仮釈放にて、少し早く出所する(初犯の刑務所では8割以上がこちら)
しかし、仮釈放で出所するには
最低限2つの条件をクリアしなければならない。
a.身柄引き受け人(ガラ受け)がいること
b.仮釈放の面接を受け、審査に通ること
つまり、Sさんは仮釈放の対象となり、これから面接を受けるところまで来たのだ。
およそカリメン(準備面接)を受けて1~3ヶ月でホンメン(委員面接)が入り、
審査を経て、通れば1~6か月くらいで出所ができるのだ。
Sさん、カリメンを受け、順調にホンメン(委員面接)を終えた。
あとは懲罰に上がることがないよう、おとなしく過ごすだけのところまで来た。
そして、3か月後のある朝、担当の刑務官様に呼ばれて、
工場は卒業となった。
「おい、S。ここまでよく頑張ったな。外に出ても、しっかりやれよ」
刑務官様がねぎらいの声を掛け、Sさんは満面の笑みで工場を出て行った。
あとは釈放前教育という別の場所で2週間を過ごせば、いよいよ出所だ。
「いやぁ、よかったですねぇ。Sさん無事に出所できそうだし」
「そうだねぇ。ここまで順調だったよね。面接もトントン拍子だったし」
周りの懲役たちも喜びのおすそわけのごとく、Sさんの話をしていた。
「Sさんには世話になったけど、もう一生会うことはないだろうなぁ」
「そうですねぇ。もうちょっと色々話を聴きたかったですね」
ところが、その日の昼前、Sさんが工場にまたやって来たのだった。
「Sさん、何で戻って来てるの?」
工場は作業中にもかかわらず、ざわついた・・・
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