刑務所で具合が悪くなるという、泣きっ面にハチ的なお話を続けています。
前回は、
刑務所らしい「非常識な」カゼ予防対策をご紹介しました。
(「
刑務所で具合が悪くなったら(10)・・・刑務所の理不尽な『カゼ予防』」)
今回は
「雑居で具合が悪くなったら」というお話をさせてください。
イロイロとメンドくさい雑居では、オチオチ具合悪くなってもいられません。
ましてや
下っ端のうちに具合が悪くなったら「肩身せまい」では済まされず…
「気ぃ抜いてっからだ」と部屋から
追い出されることもあるんです。
1.インフルエンザのいやがらせ
カゼで困るのが、同じ雑居の仲間がカゼをひくことです。
雑居房は10畳程度のせまい部屋に6人前後が、閉じ込められています。
こんな閉鎖空間で誰かがカゼをひき始めたら、そりゃもう、悲惨です。
「頼むから、うつさないでくれよ」と祈っていても、
耐えてせいぜい1週間。
あっという間に、
同じ雑居の半数は少なくともカゼをうつされてしまいます。
しかしお互いさま、次回は自分からうつすかもしれないので、文句も言えず。
「カゼをひいたら、病舎に隔離すればいい」と思うのですが、そうもいかない。
「具合が悪い→病舎で休養」は、最低でも
「38℃の発熱」がないとダメなんです。
サボらせないため、病舎に行くための「体温38℃ルール」は厳格。
その上、
実際の病舎は「ひたすら寝ているしかない」という退屈極まりない空間。
サボれる!と喜んで行ったら、TVもない、本も読めない、何もさせてもらえない…
懲役たちにサボらせないため、病舎をツラい場所にする刑務所って、恐るべし。
だから、慣れた懲役たちは
「少々のことでは病舎には行きたくない」と考えます。
コレが独居にいる受刑者なら自分だけの問題なので、構わないんです。
ところが
雑居だと、カゼひきが出ると「うつす」ワケで最悪!
「病舎に行きたくないから」ってガマンされたり、黙っていられると、たまりません。
カゼならまだしも、インフルエンザはシャレになりません。
ここで、
インフルエンザ疑いのKさんのやり取りを聞いていただきましょう。
K
「594番、Kです。先生!具合が悪いので、カゼ薬をもらえないでしょうか?」
刑
「あぁん?具合悪いって、何だ?」
K
「夕食後から寒気がして、具合が悪いんです」
刑
「とりあえず、体温を測れ」
K
「38.8℃です(ヤベぇ…)」
刑
「あぁん?オメェ、インフルエンザじゃねぇのか?今、流行ってるだろ」
K
「いえ、大丈夫です。クスリ飲んで寝るのでクスリだけください」
刑
「インフルエンザだろ?医務に言って、病舎の手配してもらおう」
K
「病舎ですかっ!? それだけはカンベンしてくださいっ!」
刑
「あぁん?そのままいたら、雑居の全員がインフルエンザになるだろっ」
K
「いえ、インフルエンザではないです。クスリもらえれば大丈夫です」
刑
「いいから、病舎で休め。他の連中に迷惑かけたくねぇだろ?」
K
「ホントに病舎だけはカンベンしてくださいっ!」
えぇっ!
インフルエンザだったら、部屋から出て行ってくれよ!
「カンベンしてくれ」はコッチのセリフだわ!
しかし、刑務官様も病舎への手配がメンドウなので、このゴリ押しが通るんです。
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2.理不尽な先輩と厳格な「オキテ」
インフルエンザのヤツとせまい雑居に閉じ込められていたら、どうなるか?
ほぼ
100%インフルエンザをうつされます。
しかしKさんは懲役の先輩。部屋長以外、
誰も文句を言えません。
部屋長なら
「ふざけるな!うつるから病舎に行って来い」と言えるんですが・・・
下っ端は
「自分だけはうつされませんように」と祈祷するしかないワケで。
もちろん祈りもむなしく、雑居の全員が2週間かけて、順番にインフルエンザに。
さすがに3人目がうつった頃から、強制的に病舎に連行されていました。
刑務所という、外界とは隔離された空間といえども、インフルエンザは毎年流行。
面会人や刑務官様が、外からバイ菌を持ち込んで、あっという間に広がります。
ツラいのは
「発熱に異常に強い人」が同じ雑居の先輩でいる場合。
インフルエンザで39℃の高熱だろうと、平気で作業、雑居で生活するんです。
他人にうつすだけでなく、
「元気の押し売り」をするから、やっかい!
自分がうつしておきながら、
下っ端には「気ぃ抜いてっからだ!」と怒る。
「発熱くらいで、寝込むんじゃねぇ!」と、いつも通りの生活を強要。
先にフトンで寝込むのもダメ、病舎に行くなんてトンデモナイ、と言うのです。
同じ雑居の先輩に
インフルエンザを「なす術なく」うつされるという理不尽。
さらに、カゼでも元気な先輩がいると、
寝込むのすら許してもらえない理不尽。
まさに刑務所流「究極のいやがらせ」
「下っ端がうつしたら、全力でイジメるくせに…」
しかし、キビシイ雑居では、コレだけでは済まないんです。
カゼをひくとどうしても、せき・クシャミはガマンできなくなります。
キビシイ雑居では「せき・クシャミ」にも、厳格なオキテが存在します。
マスクをする?いえいえ、そんな甘いモンじゃありません。
「せき・クシャミをするな」と言われるんです。
「そりゃ、ムリだろ!?」と、下っ端の頃は思いましたが、コレがもう、
理不尽。
発熱は2~3日で乗り切れますが、せき・クシャミは長引くからそうもいかない。
私にとっては、こちらのオキテの方が、ツラい、メンドくさかったです。
①限界まで、せき・クシャミをしない
②する時は「失礼しました」と言う
③マスク着用の上、音を殺す
④手の平ではなく、腕でおさえる
どうです?わかりますか?
①:したい時に、せき・クシャミをすると怒られます。
ガマンにガマンしないとダメ。
「うるせぇんだよ!」「汚ねぇんだよ、気づかいしろよ!」
こう怒鳴られますので、
極力回数を減らさないといけません。
②:これは刑務所では
有名な「オキテ」なので、ご存知の方も多いハズ。
せき・クシャミをしたら、一回ごとに「失礼しました」と周りに言うこと。
言わなければ「うるせぇ!汚ねぇ!」と、また怒鳴られます。
③:シャバの常識ならば、マスクをしていれば、せき・クシャミは許されます。
しかし、刑務所では、そうはいかない。
音を出す、何度もする、コレは「謙虚でない」と説教されます。
④:せき・クシャミを手の平でなく、腕でおさえるというのはわかりにくい?
ツバが飛ぶのに、手の平で押さえるのは汚い。そこら辺を触られては困ると言う。
だから
腕を曲げて、ひじの部位あたりで口元を押さえろというオキテなのだ。
メンドくせぇ、うるせぇ、と思いましたが、
あら不思議。
自分が古株になり、部屋長になると、
下っ端に同じことを当然のように要求です。
こうして
どっぷりと「懲役に染まった」イカレた人間が出来上がります。
困るのは、出所してしばらく経った現在でも、
このクセが抜けないこと。
人と会い、緊張している場面ほど、
ついこのクセが出てしまうのが恥ずかしい。
ゴホッ!
ひじの部分で口元を押さえ、「失礼しました」と言ってしまう…
そんなヤツを見たら、「懲役アガリだな」と思って、間違いありません。
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さすがに失礼しましたとは言いませんけど、幸いにも産まれてからずっと娑婆で生き続けてる自分も腕で咳とめることあるんでそんなに気にしなくていいと思いますよ
あと、病舎に行かない限り懲役作業は継続されるんですよね? その場合技官の刑務官は配慮して優しく接してくれたりするのでしょうか? それともやはりいつも通りですか?
最後に、ノロウィルスに感染して雑居房で吐いてしまったなんてこともあったりするのでしょうか?
by クライヴ (2016-04-19 21:05)
はい、病舎に行かない限り、懲役作業はやらされます。
当然ですが、別に優しくしてくれることもありません。
というか、病気の重い軽いにかかわらず刑務官様に気に入られていれば心配されますし、嫌われていれば無視されます(笑)
そういうところです。
by きりたんぽ (2016-04-20 00:07)