刑務所で具合が悪くなったら(7)・・・ホントに死んでしまったら

もしも「刑務所で具合が悪くなったら」というマニアックな話を続けています。

前回は「急病になって、死にそうになる」笑えない状況の話をしました。
（「刑務所で具合が悪くなったら(6)…なかなか救急車では運んでもらえません」）

重病は刑務所で対応できないので、外の一般の病院に行くワケですが、それが大変！


刑務所で重病になって、死にそうになるのは笑えない話ですが、それ以上に

「急病でもすぐには病院に運んでもらえない」ので、恐ろしい！

夜間は人手がない、手続きがメンドウ、理由はありますが、これじゃ助からない!?


前回の「軽い心筋梗塞」だったHさんは、無事回復しましたが、運が悪ければ・・・

ツイていなければ、死んでしまうかもしれない？

というワケで、今回は「ホントに死んでしまった」ケースをご紹介します。


1．刑務所でブッ倒れたら
「獄死」・・・できれば避けたい死に方ではないでしょうか？

刑務所にブチ込まれるだけでもどん底なのに、そこで死ぬなんて・・・

死ぬパターンは無数なれど、獄死はミジメな死に方の上位は間違いないでしょう。


いや、でも、しかし、「刑務所で死ぬ」なんてことはあるのか？

私も最初はそう思いました。滅多にないことで、自分の周りでは起きないだろう、と。

実際は数回、見聞きしました。結構、身近な現実で驚きましたね。


まず、刑務所にはジジイもたくさんいて、65歳以上の割合は１割を超えています。

70代は一緒にフツーの作業もしています。

さすがに80代は高齢者等を集めた「モタ工場」で作業させていましたが・・・


高齢では体にガタが来ていますし、いつ死ぬことが起きてもオカシクない。

高齢者で懲役10年なんて人を見ると「無事に出所できるかな？」と心配です。

ましてや無期懲役囚だったら、もう、獄死確定・・・


現在の無期懲役は、ほぼ終身刑と化しています。

仮釈放の割合がきわめて少ない。（仮釈放になっても30年以上はかかる）

無期懲役の人が仮釈放される人数よりも、獄死する人数の方が多いのですから…


そんな無期懲役の受刑者も、周りに何人かいて、複雑な気持ちになりました。

60代の無期懲役のオッサンがいましたが、もうシャバには出られないでしょう。

「この人は獄死するんだ」と思うと、せつないです。


話が多少ズレましたが・・・ジジイはいるので、死ぬこともあるのです。

２月初旬の平日のある朝、とても寒い日でした。

普段通り、工場に出役して作業を始めたばかりの時間帯、８時過ぎでしょうか。


―――バタバタバタバタっ！

廊下を何人もの刑務官様が、ダッシュで走る音が聞こえました。

どうやら、となりの工場で何かあったようです。


これは脱走ではなく、応援の刑務官様が駆けつける足音なんです。

どこかで「非常ベル」が押された証拠。

非常ベルは刑務所内のいたる所にあり、赤色で、横断歩道のボタンみたい。


非常ベルは、ケンカなどのトラブルがあると、刑務官様が応援を求めて押します。

トラブルを鎮圧するため、証拠を撮影するため、応援が必要なんです。

処遇棟に待機、または手が空いている刑務官様がダッシュで駆けつけてくるのです。


というか、非常ベルが鳴ったら駆けつけないと、若手は怒られます。

「となりの工場は、朝っぱらからモメているな・・・」

作業拒否、懲役どうしのトラブル…朝は非常ベルが押されることが多いんです。


毎日退屈な懲役生活では、こんな他人のトラブルが気になってしょうがない！

作業の手元だけ動かし、耳を澄まして、となりの工場の声を聴いていると・・・

「オイっ！医務に連絡して、車いす持ってこい！」


ん？車いす？

あれっ？いつもの非常ベルのパターンと違う！

暴れた、モメた、であれば「犯人」が連行され、応援の刑務官様の帰るのだが。


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2．獄死するということ
その後は、となりの工場の出来事なのでわからず、気になっていたのですが・・・

当時私は刑務所にも慣れ、何人かの刑務官様とはアレコレ訊ける関係でした。

思い切って「先週のとなりの工場、どうだったんですか？」と尋ねると


「ん？何のことだ？オレは知らん」

コレが刑務官様が質問に「最初に答える」お約束のセリフ。

これであきらめてはいけない。


私「いえいえ、先週の朝、非常ベルで大騒ぎになったじゃないですか～」

刑「あぁ、あのことか・・・残念だったな」

私「ケンカですか？誰かケガしたとか？」

刑「いや、そんなんじゃねぇんだ」

私「残念って、何だろう？大人数が作業拒否したとかですか？」

刑「いや、亡くなったんだ」

私「えぇっ!?　死んだってことですか？」

刑「となりの工場の高齢者でな。70代だったらしいが・・・」

私「刑務所で死ぬなんて！そんなことあるんですか？」

刑「ココでも年に１～２人はいるよな」


どうやらとなりの工場のジイさんが、急病で死んだらしい。

朝、急に胸の痛みを訴えて、その場にうずくまるように倒れてしまったとのこと。

高齢者だけに、担当の刑務官様も「ヤバい！」と、あわてたらしい。


それで「非常ベル」が押されて、応援を求めたというワケだった。

車いすに乗せられ、割とすぐに救急車で運ばれたらしい。

刑務所にしては珍しく、迅速な対応だったと言える。


倒れたのが夜間ではなく、人手も多かったことが理由としてあるだろうが、

70代のジイさんが倒れたら、さすがに「死んでしまう」と思ったのだろう。

仮病・詐病がてんこ盛りの刑務所だが、ジイさんは演技ではないと認められたワケ。


しかし、結果的には死んでしまった…

病院に運ばれ、入院し、数日後亡くなってしまったらしい。

これは刑務所が悪いワケでもなく、ジイさんの運命としか言えない。


それにしても、刑務所で倒れて、そのまま死ぬなんて、やはり悲しすぎる・・・

以前にもお話ししましたが、倒れて入院しようが「受刑者は受刑者」

急病・重病であろうとも、家族に連絡されることはありません。


「今日、明日の命だ」と言っても、死に目に会わせてもらえないんです。

（まぁ、連絡しても「会いたくない」という家族も多いようですが）

連絡が行くのは、死んでから。


これが受刑者の立場とは言え、何だかせつないです。

希望のない暗い話でしたが、長くなったのでここまで。

次回もう１回だけ「刑務所で死んでしまう」お話をさせてください。



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タグ：連行 非常ベル 獄死 急病 医務

コメント 5

いやいやつらい話です。
by 夏炉冬扇 (2016-03-14 21:21) 

獄死なんてかわいそうですね(/_;)
彼は生きて帰ってきてくれることを祈ります。
刑期は２年ですが…笑
この前、面会に行ってきました！
名前、住所、年齢、職業、関係、面会の目的を紙に書きました。それから金属探知機みたいなゲートをくぐってやっと建物の中に入れてもらえました。面会時間は30分でした。拘置所とは違い、付き添いの刑務官が私の名前が書いてある資料みたいなのをずっと見ていて私のこともチラチラ見てきたりメモとったりしていました。そして何よりびっくりしたのが刑務所の中に団地があったことです！
彼に聞いたら職員さんたちの家と言われましたが、刑務所の中に家があるなんて衝撃的でした！子供の服も洗濯干してあったので子供もここに住んでるのかと思うと驚きです。
by 海 (2016-03-14 22:13) 

海さん、こんばんは(^^)/

コメントをくださり、ありがとうございます。m(__)m
面会に行かれたんですね。お疲れさまでした。

とりあえず面会時間が30分と、ちゃんと確保されていたようなので良かったです。
施設によっては15分にゲソられるので、油断できません。
慣れないと、立会いの刑務官が気になりますよね。

「団地」はわかります。
職員住宅のことだと思いますが、正確には「塀の外」ですね。刑務所の中からも見えます(笑)。
間違っても、刑務官の子どもが刑務所のグラウンドに遊びに来ちゃったりしません。
せっかくですから、面会の際はイロイロ見て楽しんでいってください。

またコメントをお待ちしています。
いつもお読みくださり、感謝です。
by きりたんぽ (2016-03-14 23:48) 

こんばんは。
今日彼から手紙が来たんですけど、喘息の発作が出たみたいでずっと続いてるようなんですが、いくら言っても「だから？」と言われてしまって放置されてるらしいんです(/_<。)
咳もずっと続いてて苦しいらしく、かわいそうで(/_;)
私に何かしてあげられることはないですかね？
彼は担当の人とのやりとりを記録してあるみたいでこのまま放置されたら裁判するとも言っています(≧△≦)
by 海 (2016-03-16 19:35) 

海さん、こんばんは(^^)/

コメントをくださり、ありがとうございます。m(__)m
彼氏さんの病状は心配ですが、刑務所では「よくある仕方ないケース」とも言えます。
喘息など持病の類は、入所時に必ず訊かれます。
その時にしっかりと申告しておかないと、後から言ってもなかなか聞いてもらえないのです。
「どうして、最初に言っておかなかったんだ？」
「通院していたか？薬は使ってなかったのか？」
この辺の質問にキチンと答えられないと、後から言った場合「仮病」と疑われちゃうんですよ…

喘息は吸入薬を刑務所でも処方してくれます。
ですから、担当の刑務官様が具合悪いと認めてくれて、診察までこぎつければ、コッチのモンなんですがね。

海さんにできることは、面会に行って、事情を訊いてあげることくらいでしょうか…
彼氏さんのお怒りはわかりますが「言った、言わない」の争いになりますから、喘息疑いくらいでは受刑者側は勝ち目ないと思われます。
彼氏さんが無事であることを祈りますが、彼氏さんが試されている場面でもあります。
ホントに具合が悪いのなら、彼氏さんは粘り強く、感情的にならず、診察してもらえるよう毎日お願いするしかないですね。

何とか回復して、元気でいて欲しいです。
by きりたんぽ (2016-03-16 23:32)