刑務所でのカネにまつわる話(5)・・・カネの恨みと男の嫉妬は恐ろしい

刑務所での「収入」についてお話ししています。

今回は、懲役たちのセコくて、ショボいカネの話をさせてください。

１円でも多く欲しい、金持ちに見られたい、なりふり構わぬ行動がトラブルの元。


たかが数百円の差を嫉妬して、イジメに発展したり・・・

一日でも早く出所したいがために、なけなしのカネを寄付してみたり・・・

人間って、追いつめられると、こんなにみっともない？というお話です。


1．日給30円差の「高給取り」
前回は「作業報奨金」という、シャバで給料にあたるカネをご説明しました。

この作業報奨金は「等工」と「ヅケ」により、金額が決まります。

それを決めるのは、工場担当の刑務官様。


とくに「ヅケ」は刑務官様の気分次第の「独断」

嫌われると減らされるし、好かれれば大幅アップという、実は不平等。

刑務官様の「お気に入り」になりたくて、オッサンたちが日々ゴマすりします。


コレを「ヅケ取り」と言いますが、毎日やらなくてもカネがアップする方法が２つ。

１つは、指導補助（作業の班長など）、計算係、衛生係に任命されること。

責任ある作業なので、イキナリはなれず、刑務官様に相当気に入られないとダメ。


もう１つは「配食係」に任命されること。

これは３度のメシを配膳し、配り、片づける役目なんです。

コチラも刑務官様に気に入られないと指名されませんが、新人でもなれちゃいます。


メシなので、１日３回、365日休むことなく、作業をしなければならないんです。

休日だろうが、関係ナシ。１食につき30分は時間をとられます。

メンドくさいわ、時間をとられるわで、人気がないんですねぇ。


さらに、メシゆえに「少ねぇ」とか、すぐに文句を言われ、つめられます。

過去にシャリあげなど「メシのトラブル」を起こしたヤツにはやらせません。

そんなことがあり、やりたがらない、できるヤツが少ない、という変わった作業。


「配食係」は１つの工場で３～５人くらい任命され、その分「作業報奨金」も出ます。

１食30分計算で１日90分の「時給」が出ますが、ホントにごく少額。

１日20～30円、１ヶ月で700～800円にしかなりません。


年中無休、みんなが働かない時間に働かされ、こんなショボいカネ・・・

盛り付けや量の文句を言われ、気をつかいまくり、ホント疲れます。

しかし、嫉妬するアホが必ずいるんです。


「なんだ、アイツ！報奨金をたくさんもらいやがって！」

―――オイオイ、たかが1,000円にも満たない金額じゃないかよ・・・

やはり、刑務所。ほとんどキ◯ガイのクレーマー！


働きたくないけれど、一円でも多く欲しいヤツ・・・

他人が自分よりカネを多くもらっているのが許せないヤツ・・・

こういった「がめついヤツ」から強烈に嫉妬されるんです！


人がゆっくりしている間、メシの準備、後片付けをして、働かされ・・・

正月も関係なく、１日３回、時間を潰され、その額は１ヶ月700～800円

それを「高給取り」と嫉妬されるんですから、たまったもんじゃない！！


「作業報奨金たくさんもらいやがって！」と、文句を言われ、

「なんでオレじゃなくて、オマエが配食係なんだよ」と、からまれ

「アイツが配食係はオカシイ。引きずりおろしてやろうぜ」と、いやがらせ。


この流れで、何人もの懲役仲間が引きずりおろされ、泣きを見たでしょうか。

ホント、食べ物とカネの恨みは恐ろしい、

そして、男の嫉妬も恐ろしい。まして懲役たちの嫉妬はキ◯ガイです


たしかに「配食係」を２年も３年も続ければ、数万円にはなります。

しかし、文句を言われ、いやがらせをされ、割に合わない！

作業報奨金を１円でも多く欲しいから、と配食係に飛びつくのはおススメできません。


配食係は周りの嫉妬をかわせる、ある程度ベテランになってから・・・

やはり、刑務所では「目立たず、淡々と」が一番です。


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2．カネを送金して、仮釈放をゲット
出所後のことを考えて、一円でも多く「作業報奨金」を貯めておきたい！

その気持ちはわかりますが、なんせ金額がショボイ・・・

順調に１等工になり、無事故で過ごして、５年でやっと２５万円程度。


とても出所後の「社会復帰への資金」にするには心細すぎます。

そんなのアテにして、ガマンして貯めなくても・・・と思うのですが

さすが刑務所、上には上がいました。


なんと、カネは貯めておくのですが、それは出所後のためではないんです。

一日でも早く出所してやろうと、貯めた金をまとめて「送金」

「えっ？ただでさえ少ない作業報奨金を、送金しちゃうの？」


出所後のためではなく、今現在使ってしまう、それも送金する・・・

どこに送金するの？それが何でトクするの？？

また、送金と仮釈放に何の関係があるのか、私はまったくわかりませんでした。


この「ズル賢い」ヤツが言うには、「服役中に弁済をする」

つまり、弁護士を通して、被害者にカネを送るというのです。

ただ、コレは民事裁判で指示が出ていない限り、あまり現実的ではないらしい。


基本的に、受刑者は被害者と連絡を取ることを禁止されています。

弁済も基本的には「出所後」がフツーです。

そこをあえて、弁護士を通してカネを送金し「今から弁済してます」とアピール。


本人が言うには「受刑中から弁済をするなんて、反省しているとみなされるだろ？」

そうすれば、ポイントが上がり、仮釈放を多くもらえ、出所が早くなる。

だから「作業報奨金」を貯めて、限度額まで弁済として送金する、らしいです。


「ホントに出所が早くなるのかよ？」

しかし、長期刑の人はワラにもすがりたい気持ちなんでしょう。

これをマネしてやっている人は、チョイチョイいました。


さすがに弁護士を通しても、被害者に弁済するのは問題が多く、ムズカシイらしい。

その代わり「犯罪被害者の団体」に、寄付という形で送金する人は、多く見ました。

寄付をすれば、被害者に弁済したのと同等に見なされ、仮釈放のポイントになる？


「なんだかなぁ」と違和感を覚えずにはいられません。

弁済のための送金じゃねーよ、目的と手段がオカシイだろ、と思いましたが、

それよりも「そんなコトで、出所が早くならないだろ」と、疑問でした。


どうしても気になって、私の仮釈放の面接時に、思い切って訊いてみました。

「あのー、受刑中に寄付とか弁済とかって、やはり仮釈放に影響するんですか？」

「あぁ、弁済はやらないよりはマシだが、それほど関係ないね」

「私も寄付をしようか、と悩んだのですが、出所後の弁済に使おうと・・・」

「あぁ、寄付はまったく関係ないね。だって寄付でしょ」

「あ、そうなんですか？」

「誰だろうね、弁護士が吹き込んだのかな？アピールだろうけど、関係ないから」


なんと、服役中の弁済や寄付は、仮釈放に影響しない！

衝撃の事実、ただの都市伝説だったとは！

そうとも知らず、懲役15年や20年の人がせっせと送金しているのは、せつない。


長い間、刑務所にブチ込まれて、カネなんかスッカラカンなのに・・・

そのなけなしの「作業報奨金」まで、意味のない寄付に使うとは・・・

これが悪さをした報い、さらに下心で企んだ罰なのかもしれませんが。


やれやれ、反省なんかクソもない、とんだアピールですよ。

ホント、人間追い詰められれば、手段を選ばないとは言いますがねぇ。

まぁ、自腹を切っているワケですから、悪いことではないですが・・・



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タグ：作業報奨金 寄付 弁済 仮釈放 ヅケ取り 配食係 送金

コメント 5

きりたんぽさん、こんばんは(^^)
刑務所とこちらの世界では、お金の単位がまるっきり違いますね！
懲役のおっさん達がゴマする姿は想像したくないです(^-^;

被害弁済は、裁判で心証を良くする為にするするとアピールしても実際出所しても知らん顔の人もいそうですよね？
だとしたら、動機不純だったとしても刑務所で働いたお金を被害者に送るというのは必ずしも悪だとは思わないないです！
by まろん (2015-11-27 18:15) 

まろんさん、こんばんは(^^)/

コメントをくださり、ありがとうございますm(__)m。
懲役のオッサンのゴマすりは、それはもうロコツですよぉ。
シャバでやったら、ロコツすぎてかえって逆効果になるようなものでも、刑務官様はアホなのか？ゴキゲンですからねぇ。

そこまで徹底できない、プライドを捨てきれない自分にイヤになっていました。
刑務官様には気に入られるだろうが、そんな自分になりたいのか？人として大事なモノを失うのではないか？(笑)と大げさですが、そんなふうに葛藤していました。

正しいことをしているかどうかではなく、刑務官様に気に入られるかがポイントですからねぇ・・・

被害弁済に関しては、弁済する人は裁判前からしているし、しない人は一貫してしない、とハッキリ分かれている印象でした。
動機が不純でも、責めないまろんさんは優しいです。

またコメントをお待ちしております。
いつもお読みくださり、感謝です。

by きりたんぽ (2015-11-27 21:08) 

きりたんぽさんの葛藤が伝わりました。
ゴマすりおっさんとか、ちょっと気持ちの悪い世界ですね(>_<)

被害者が被害弁済を一切はねつけてる、お断りの場合でのお話をしてしまいました。
by まろん (2015-11-27 21:36) 

とても面白い記事を書いて下さりありがとうございます。

仮釈放に関してですが、気になった点があります。
作業報奨金から弁済をしても仮釈放の審査にはほぼ影響が無いとのことでしたが、
無期懲役の場合は仮釈放の審査で「被害者遺族の意見聴取」というものがあるそうです。
そのため、少しでも作業報奨金から弁済し続けたほうが、
結果的に仮釈放が認められる可能性が高まるのではないでしょうか。
ずーっと贖罪の意識を送られ続けたら、
それによって赦そうとする被害者遺族の方もいらっしゃるでしょうから。
と言っても、実際のところそれくらいで赦してくれる遺族の方がどれだけいらっしゃるかは何とも言えないので、
やはりあまり影響が無いというのも正しいのかもしれませんが・・・。
by 山田太郎 (2019-12-18 05:26) 

山田太郎さん、こんにちは。

「無期懲役」の受刑者における「作業報奨金」での弁済についてのご質問ですが、レアケースですよね……

記事をよくお読みいただいたでしょうか？
受刑中は直接被害者に弁済できないのです。
弁護士経由にて、被害者が受け取ることを了承すれば別の話でしょうが、現実的には難しいと思われます。

また無期懲役は特殊なケース。
現在のパターンでは懲役を30年近くつとめないと、仮釈放の審査のリストにあがってきません。
無期懲役受刑者も数千人しかおらず、そのうち仮釈放となるのは年間10人にも満たないはずです。
つまり対象者があまりにも少なすぎて、分析できないでしょうね。

無期懲役となった犯罪内容は人それぞれですが、いずれにせよ「エグい」ものばかりです。
スズメの涙ほどの作業報奨金にて「アピール的な」被害弁済をしても、被害者遺族の赦しは得られないと思います。
虫が良すぎるといったところでしょうか。
by きりたんぽ (2019-12-22 12:15)