刑務所と懲罰(3)・・・怒らせると怖い「懲罰審査会」

前々回より「刑務所の中で、悪さをするとどうなるか？」についてお話ししています。

まぁ、シャバでも刑務所の中でも、バレなければ大丈夫なんでしょうが・・・

それでは話にならないので「悪さがバレてしまったら」について、ご紹介します。


悪さがバレてしまうと、「懲罰」が待っています。

しかし、いきなり「懲罰」を喰らうワケではありません。

それは、シャバの手続きと似ていまして・・・まず連行（逮捕に相当）されます。


そして「調査棟」と呼ばれる独居に隔離（留置場に相当）されます。

次は「調査」と言って、警察の取り調べに当たる聴取をされます。

最後に「懲罰審査会」と言う、裁判にあたる場所で処分が決まります。


ここまで来て、ようやく「懲罰」かどうかが決まります。

こう並べても、わかりにくいと思いますので、前々回、前々回で具体的に
「刑務所と懲罰(1)・・・食い物をかくしておく「不正配食等」」
「刑務所と懲罰(2)・・・悪さがバレて、連行されると・・・？」
にて、ショボい「反則行為」＝食い物を隠してバレる、で説明しています。


今回は、いよいよ処分が決まる「懲罰審査会」についてお話しします。


5．裁判より緊張する「懲罰審査会」
悪さがバレて連行され、１～３週間すると、とうとう処分が決まります。

と言っても、「懲罰」をいきなり申し渡されるのではありません。

処分を決定する「懲罰審査会」という場に呼ばれ、尋問の上で処分が決まります。


刑務所という「人間扱いしてくれない所」のハズなのに、コレは意外でした。

一応、カタチだけは「言い訳」を聞いてくれるのです。

ただ、それは公判の法廷よりも緊張する場でもあり、難易度はMAXです。


毎週１回決まった日に、その「懲罰審査会」は開かれます。

そこは、おエライ刑務官様が勢ぞろい！

会議室のテーブルを取り囲むようにズラリと幹部職員が一通りいるんですよ。


コレだけでも、かなりな威圧感です。緊張しないほうがムリ！

それなのにこの場に呼ばれて、一人立たされて、尋問をされるワケです。

まるで裁判と同じ。ココで冷静に自分の主張をできれば、大逆転もアリ？？


しかし、裁判より圧倒的不利な状況なんですねぇ。

弁護士という見方もなく一人っきり、止めてくれる裁判官もいません。

こりゃあ、ハンパない修羅場？です。


ところで、「懲罰審査会」で決まる処分は「行政処分」と同じだそうです。

つまり、スピード違反して反則金の処分を受けるのと同じ位置付けらしい・・・

ですから、裁判所を通さず、刑務所のおエライさんたちが決めちゃいます。


審査会では、事前に話し合われ、ほぼ処分を決めたところで、本人が呼び出されます。

「ご本人登場」ですが、完全アウェーでの「被告人質問」と同じです。

「594番◯△！入れっ！」

刑務官様に呼ばれ、おエライさんたちが集結する会議室に入っていきます。


「調査」の段階で答えた「調書」がカンタンに読み上げられ、尋問です。

「懲罰疑い」の悪さをした受刑者相手なので、刑務官様も「超・上から目線」

尋ねる、というより、怒鳴る、説教する、という刑務官様もいます。


まだこれから訊いて、まだ処分も決まっていないというのに・・・

やっぱり、マトモな人間扱いはしてくれません。


しかし、実は、意外とココからの「しゃべり」によって、処分が変わるんです。

首の皮一枚つながるか、傷口を広げるか、それともとどめを刺すのか・・・

結論ありきか？と思ったら、まだガンバらないとダメなんです。


後半、再現シーンでお送りします。


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6．刑務官様のゴキゲン次第の懲罰
ここでは説明するのに、またKさんに登場していただきましょう。

Kさんは新聞一面も飾った、ある方面で有名な受刑者です。

飲酒運転⇒暴走⇒事故⇒相手２人死亡⇒懲役10数年というツワモノです。


懲役◯年とハッキリ言ってしまうと、誰かわかってしまうので、勘弁してください。

そのKさん、イジメられっ子の上、ウソ・言い訳をするので嫌われていました。

この時も、独居で「しょうゆ」をかくしていたのが見つかり、調査になりました。


しかし、懲罰審査会に呼ばれ、懲罰になるかならないか最後のチャンスです。

まぁ、Kさんのことです。チャンスを潰し、見事にこじらせることになります(笑)。

それでは懲罰審査会の実況中継でお送りします。


刑「オイ！K！オマエは10月◯日の夕食後、しょうゆを舎房にかくしておいたな？」

K「いえ…かくしていません」

刑「はぁ？巡回の職員にかくしているのを現認されただろうが！」

K「いえ…取っておいただけです」

刑「だから！それは『かくしておいた』と言うんだろうが！」

K「いえ…次の日の朝食が納豆だったんで、取っておいたんです」

刑「だから！それは不正だろうが！取っておくのもダメだろうが！」

K「いえ…しょうゆを使わなかったんで、もったいないと思ったんです」

刑「じゃあ、どうして湯飲みの中にかくすようなことをしたんだ？」

K「いえ…一番置きやすい場所だったからです」

刑「・・・・・・（怒）」


誰の目から見ても、Kさんはしょうゆを残して、かくしたことは間違いないんです。

でも、認めない。

ていうか、話がかみ合っていない


さすが新聞の一面を飾った受刑者だけはあります。

コレ、本人に言わせれば、言い訳・ヘリクツではないそうです。

「ホントにそう思っているから、答えただけだ」と言うんです。


Kさん、周りの懲役たちからは「そういうヤツ」と思われていたので、

「アイツ、頭のネジ３本くらい取れてんな」と、笑われて終わりです。

しかし「そういうヤツ」とは知らない刑務官様は、ブチ切れです。


刑「K！オマエはあくまでもしょうゆをかくしたとは認めないんだなっ！」

K「いえ、かくしてはいないですよ」

刑「わかった！オマエの反省次第で処分が変わるんだが、もういいぞっ！」

K「・・・？」

刑「K！今回の事案に対する処分を言い渡す。懲罰５日間だ！」


一般の方は、これがどういうことかわからないと思うので、解説させてください。

「しょうゆをかくした」と言うのは、たしかに「懲罰」な行為ではあります。

しかし、この程度だと１回目からいきなり懲罰は少ないんです。


この「懲罰審査会」の場で、謝罪と反省の弁を必死に言えば、情状酌量アリ！

運が良ければ、口頭注意だけの「訓戒」で済むこともありますし、

初回はフツー、口頭注意＋ちょっと不利益アリの「戒告」で済むんです。


ところが、Kさんのように素直に認めず、反省もしないと、怒りを買ってしまう…

そして、バツ割増になり「懲罰」になってしまうんです。

だから「懲罰５日間」は激辛なんです


ちなみに「懲罰」と呼ぶのは通常「閉居罰」であり、これ以上はないんです。

日中は何もさせてもらえず、ただひたすら座っているのが「閉居罰」

人間、何もさせてもらえず、ただじっとしているのって、かなりツラいです。


「重い懲罰」と言うのは、この閉居罰の日数が増えていくことなんです。

軽くて５日間、重くて６０日間と、かなり幅があります。

この解説はいずれすることにしまして、Kさん、せっかくのチャンスを自滅です。


ウソでもいいから「認めて、反省するフリ」すれば、懲罰は避けられたのに・・・

シャバと同じく、刑務所でもウマくやるヤツ、傷口広げるヤツ、がいます。

Kさん、やっちまいましたが、まだカワイイ方なんです。


もちろん、ブン殴ったとかハナからヒドイ事案もあります。

でも、そうではなく「懲罰審査会」でやっちまったケースがまだあるんです。

次回は「違反を認めずに、こじらせた場合」を、もう一つご紹介しましょう。



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タグ：懲罰審査会 捜検 懲罰

コメント 4

( ﾟ∀ﾟ) ｱﾊﾊﾊﾊﾉヽﾉヽﾉ ＼ / ＼ / ＼
見事に話がかみ合ってませんねぇ
Kさんはマジで“隠している”とは思ってない辺りがスゴイ

多分、Kさんって嘘発見器にかけても、絶対に嘘がバレないタイプでしょう。

・・・ところで、きんさんはなんで審査会の内容を詳しく知ってるんですか？
もしかしてご本人？・・・んなわけはない？　( ´∀`)ノ
by V(-￥-)V　ごとう　さとき (2015-10-08 17:16) 

ごとうさん、こんばんは(^o^)

コメントをいただき、ありがとうございますm(__)m。
いつもていねいにお読みいただき、恐縮でございます。

ムムッ！さすが、鋭いご指摘、ご質問ですねぇ(笑)。
なぜ本人でもないのに「懲罰審査会」の詳細を知っているか？
コレは実はブログの記事にしようと思っていたことなんです(笑)。
なので、カンタンに言いますが、工場担当の刑務官様がリークするんですよ。信じられませんが・・・
ホント、刑務官様によっては、気分次第でペラペラしゃべっちゃいます。ヒドイもんですよ。

衛生係、計算係をやっていますと、工場担当の刑務官様と話す機会がかなり多くなります。
くだらない世間話から、刑務官様のヒマつぶし、愚痴まで、色々な話を聞かされます。

その中で知ったことがほとんどです。こちらもオモシロいので、調子に乗って、刑務官様をヨイショしてもっとしゃべらせるのです(笑)。
そしてその漏らした話を元に、本人に確認しに行くんです。コレ、いやらしいですが、刑務所では誰もがしますからねぇ。

というワケで、刑務官様が話の元なので、間違いがあるワケもなく、さらにご本人に確認しているので、ホントの話です。

残念ながら私は「懲罰審査会」でヒドイ目に遭ったことはありません。何とか無事に生き残りましたんで・・・

というネタばらしでした。
納得していただけたでしょうか？
またコメントをお待ちしております。

いつもおよみくださり、本当に感謝しております。
by きりたんぽ (2015-10-08 20:37) 

初めまして、愛と言います。
いつもブログ楽しみに見ています。
先日、身内が逮捕されました。
逮捕されたらまずどうなるのか、
面会や手紙、差し入れは？中での様子は？
わからないことだらけで、ネットで調べても
本当に詳しいものはなくて困っていました。
だけど、きりたんぽさんのブログに出会い
冷静に考え動くことが出来ました。
無知な事とは本当に不安で、
きりたんぽさんのブログ内容から
色々な情報を得て安心に繋がりました。
本当にありがとうございます。
今身内は裁判待ち。前科があり実刑は確実と言われています。
心の支えとしても、きりたんぽさんのブログにはとても助けられています。
そして、きりたんぽさんの文才に魅せられ
最初からブログを読まさせてもらい
今では、きりたんぽさんの
いちファンになっています。（笑）
お仕事などをしながらブログを続けてゆくことは本当に大変だと思います、凄いですね。
どうかお体に気をつけて無理されないようにしてくださいね。
本当に、助かっていて、なお楽しませてまでもらっているので、お礼を伝えたいと思っていました。ありがとうございます。
これからも、楽しみにしています。
乱文、長文失礼しました。
by あい (2015-10-09 22:05) 

愛さん、はじめまして

コメントをくださり、ありがとうございますm(__)m。
また、ブログをいつもお読みくださっているようで、恐縮です。

身内の方が逮捕されたというのは、本当に心配だとお察しします。
世の中、恐ろしいことはたくさんありますが、やはり根本は「知らない」から、より恐ろしいのだと思います。
逮捕されたらどうなるのか？裁判は？刑務所は？と、普通の生活をしていれば、知る必要もないし、知りたくもないハズですが、そうもいかないとなると、実際はパニックになるでしょう。

しかし、そういう状況になってしまった以上、これ以上悪い状況に陥らない、できる限りのことを淡々とやるというのが大事なんだろうな、と経験から感じております。

最悪な状況でも、何かできることはないか、そんなコトもお伝えしたくてダラダラと書いております。
このへぼブログも少しはお役に立てているのかと思うと、本当にうれしいです。

あまりに身に余るお褒めの言葉をいただき、恥ずかしくなります。また御礼の言葉までいただき、私の方こそ生きる力を与えられました。感謝いたしております。

またよろしければ、コメントをお待ちしております。
お気軽に疑問など、投げかけてください。
今後ともお引き立てのほど、よろしくお願いいたします。
by きりたんぽ (2015-10-09 22:55)