刑務所でお菓子が食える？⑤・・・他人のお菓子をふんだくる方法

「刑務所でお菓子が食える」＝「特食」ことについて、お話ししています。

刑務所では祝日になると「祝日菜」と言って、お菓子が一人一つずつ全員に配られます。

懲役たちはコレを「特食」と呼んでいます。


全員に配られるので、予算は60円、品数は１品で、量は少なくショボいです。

それでも、滅多にない甘いモノが食えるチャンスなので、楽しみにしています。

だから、しょっぱいスナック菓子が出た時の、あのガッカリ感と言ったら！

すべての舎房からため息が聞こえます


どーして、人間は飢えると、あれだけ甘いモノが食べたくなるんでしょう？

「どうにかして、たくさん、他人の分まで特食を食いたい」内心みな思っています。

こんな事情があるので、みんな仲良く食べて終わり、んなワケがない。


今回は、退屈で仕方ない懲役たちが「特食」でやらかすアレコレをご紹介します。

ホント、ヒマだから、くだらないことばっかりやってるんですよ・・・


1．スンナリ特食は食わせない！
意外かもしれませんが、オッサンたちの雑居では、特食を取り上げたりしません。

「シャリあげ」と呼ぶものですが、脅して取るようなことは、あんまりないです。

新入りや下っ端が「シャリあげ」されるのは、イケイケの若者の雑居の話です。


ホント、刑務所の20代の若者はメチャクチャで、シャバの常識が通用しないです。

マトモな社会人なら、お菓子を他人から取り上げて食うなんて、イカレてますけど…

これから行く方、若者の雑居のシャリあげは、ひどいんで、気を付けてくださいね。


フツーのオッサン部屋は「シャリあげ」しないというのは、意外かもしれません。

「大人のプライドで、他人のお菓子なんか取れるか！」というマトモな理由ではなく

しぶしぶ「おとなしく」しているだけなんですよね・・・


特食でモメて、トラブルになり「懲罰」になると、仮釈放に響いちゃうからなんです。

仮釈放に響くようなことを、してしまうのは避けたい。だからシャリあげしないだけ。

みんな、仮釈放を多くもらって、早く出所したいんですよねぇ。


それでも、トラブルにならない形であれば、ホントは他人の分まで食いたい！

でも「合法的」な「シャリあげ」の手段は、考えてもないんですよね・・・

じゃあ、どうするか？


平和にみんなで楽しく食うのは、何か気に喰わない(笑)。

「せめて新入り・下っ端にはスンナリとは食わせないぞ！」と考えます。

退屈で仕方ない懲役たちは、自分たちでややこしいイベントを作ります。


①賭けごと
勝てば、相手のお菓子がもらえる。これはわかりやすい。

②説教
下っ端に、因縁をつけてスンナリとは食わせない。

③まぜメシ
下っ端に、特食をメシにムリヤリ混ぜさせて、おいしく食べさせない。


こんなことをアレコレ考えて、新入り・下っ端を困らせて楽しみ、ヒマを潰します。

飢えた懲役たちの「卑しい、貧しい」思考ですよね。

私も懲役の時は、進んでやっていました。思い出すと恥ずかしい・・・


それではまず、特食をスンナリ食わせない「賭けごと」をご紹介します。


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2．相撲でお菓子をふんだくる？
ユルーい雑居房では、特食の出る祝日の前に、部屋の全員で賭け事をします。

もちろん、特食を賭けての闘いです。

懲役たちはヒマですから、「時間のかかる賭け事」をして、勝負します。


じゃんけんとかクジのような、一発で勝負が決まるモノはゼッタイにしません。

サッカー、野球など、スポーツの勝敗で決めることもありますが、臨場感がない。

その点、賭け事でよく使われるのは「大相撲」です。


どうして「大相撲」なのか？

刑務所では、大相撲期間17時～18時の間、TV中継をなぜか見せてくれるのです。

17時と言うと、平日はちょうど夕飯の時間で、食いながらTVを見せてくれます。


ヒマな懲役たちが、ボーッと見て、応援しているだけのハズがありません。

毎日生中継が見れて、15日間も楽しめて、賭け事をするには最高のコンテンツです。

「うわっ！何やってんだよ～」

「よっしゃあ！勝ったぜっ！」

舎房からは、勝敗が決まるたびに、叫び声が聞こえてきます。


「スゲエな、刑務所は娯楽がないから、相撲を真剣に見るんだ・・・」

そう、最初はカン違いしていました。

「大相撲なんて、ジジイが見るモノだろ？」と、内心バカにもしていました。


懲役生活を送るにつれ、それは大間違いだということに気づくのです。

なんのことはない、どこの雑居房でも、相撲の勝敗で特食などを賭けているんです。

だから真剣にTVを見て、いちいち勝敗に悔しがり、盛り上がるだけのこと。


たしかに懲役生活はヒマなので、大相撲中継を見ているうちに詳しくなりますが…

特食のお菓子でも賭けていなければ、ここまでアツくなるワケねーよな・・・

自分の賭ける力士が負けたら、それはお菓子が食えなくなる危機に直結します。


まぁ、この「大相撲とばくシステム」が、良く出来ていること！

以前「刑務所と大相撲(後編)・・・何でも賭け事になります」で紹介しましたが

もう一度、その賭け事の仕組みをカンタンにご説明しましょう。


大相撲の初日の前に、舎房全員で、どの力士に賭けるか「ドラフト会議」をします。

一人につき、賭ける力士３人を選んでいきます。力士１人じゃないところがウマい。

誰が優勝するか予想する、という単純なモノじゃないんです。


選んだ３人の力士が15日間で挙げた白星の数の合計が、多い人が勝ち。

大相撲は横綱が優勝する確率が高いので、横綱は賭けの対象から外します。

横綱以外の３人の力士を、ドラフト方式で３周して選んでいくのです。


勝ちが計算できる３人の力士を選ぶのは、ほぼ不可能なところが、オモシロいんです。

だから、大相撲期間中は毎日、どこの部屋からも叫び声が聞こえるんです。

勝った者は、負けた者から遠慮なく特食のお菓子をふんだくります。


何度も言いますが、刑務所ではギャンブル厳禁です。

もう１つ、特食の受け渡しも厳禁です。

どちらも発覚したら即、調査となり、懲罰は間違いなし。ハイリスクなんです。


それでも、新入り・下っ端にはスンナリ特食を食わせたくないから、やるんです。

絶好の退屈しのぎにもなりますから、大人気です。

でも、上の者も負ける確率は同じで、負けたら下っ端にお菓子を取られる屈辱です。


上の者としては、ずっと相撲の中継を見ているので、やたら詳しくなっています。

誰が今場所は勝ちそうだとか、なんとなく経験からわかってくるらしいのです。

だから負けられないし、何か勝てる気がする・・・

勝てば、お菓子がたくさん食える！


そんな子供っぽい、単純な考えで、特食のお菓子を賭けているんですよ。

これって、馬券になけなしの金をブチ込み、マイホームを買おうというのと同じ。

負けるかもしれないし、そもそも反則行為で、バレたら懲罰のリスクだし・・・


もう、根本的に考え方がオカシイ

まぁ、バレなきゃいいのかな？なんて思いますが、バレちゃうことも結構あるんです。

全員納得して、賭け事をしているのに、いざ負けたらゴネるヤツがいるんです。


たしかに相撲の賭け事には負けてしまった・・・

でも、どーしても特食のお菓子は勝った人に渡したくない！

だって、お菓子食べたいんだもん！


お菓子を渡すのがイヤだから、まさかの刑務官様にチンコロ(密告)するんです。

「先生、実はうちの部屋で賭け事しているヤツらがいるんですよ」

オイオイ！まさかの自爆テロです。


絶対に渡したくないからと、チンコロして、負けをチャラにしようとする荒ワザ！

こうすれば多くの場合、連行⇒調査⇒懲罰となってしまいます。

しかし、これには大きな問題があります。


チンコロして、問題とされ、調査となると、舎房の全員が疑いをかけられます。

つまり、同じ舎房にいる自分自身も、連行⇒調査となってしまうんです。

お菓子を渡したくないから、と密告したのが、自分まで懲罰の危機に！


そんなこと、ちょっと考えれば、わかるだろ？

懲役の精神年齢が低いのか？

食べ物の恨みは恐ろしいのか？

どちらにしろ、ホントくだらない揉めごとです。


長くなってしまったので、今回はここまで。

次回、特食をスンナリ食わせない「説教」「まぜメシ」をご紹介します。



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タグ：食事 特食 相撲 チンコロ