「刑務所でお菓子が食える」ことについて、お話ししています。
刑務所では祝日になると
「祝日菜」と言って、お菓子一品が全員に配られます。
懲役たちはコレを
「特食」と呼んでいます。
予算は60円、品数は１品で、ささやかなモノですが、懲役たちは大喜び。
いつも腹を空かせて、甘いモノに飢えているので、何日も前から楽しみにしています。
懲役なりたて、懲罰繰り返しの者にとっては、
菓子を食う唯一のチャンスなんです。
前回はそんな「特食」について、出るモノや、人気・不人気をご紹介しました。
「
刑務所でお菓子が食える？①・・・「特食」というシステム」
にて、特食のイロハを詳しくお話ししています。ぜひご覧ください。
「特食」は一品しか出ないので、すぐ食べ終わってしまい、むなしさが残りますが
年に２回、ゴールデンウイークと正月だけは、別。
祝日が連日続くので、
特食が毎日出ちゃうワケです。
懲役たちにとっては、
まさに「祭り」で、フィーバー期間、ハレの日です。
今回は、そんな
「ゴールデンウイークと正月の特食」についてお話しします。
1．連日お菓子が食える「祭り」期間
祝日が連日続く、ゴールデンウイークと正月は、
懲役たちにとって最高の期間です。
それは「連休」で作業が休めるからではなく、
「特食」が連日食えるからです。
ゴールデンウイークは４日で４回、正月は３回分をまとめて、特食が出ます。
正月を祝日何日分とカウントしているのかが、結局わかりませんでした。
刑務所のカレンダーを見ると、1月1・2・3日が祝日マークになっていることと
大みそかの日に、いっぺんに出される特食の量が3回分相当なので、この予想です。
とにかく多けりゃ、そして甘けりゃ、懲役たちは何でもいいのが本音です。
ゴールデンウイークと正月の前には、懲役たちはヒマなので必ずこんな会話をします。
「お菓子が毎日食えるね」
「いやぁ、幸せだねぇ」
「何が出るんだろうね？」
「いやぁ、量が多いヤツがいいな」
「やっぱ、クッキーかな？」
「いやぁ、甘いヤツがいいよね」
オッサンたちが、まるで小学生のように、お菓子の話を真剣にしているのです。
たかが小さなお菓子一袋を食べられるだけで「幸せ！」とか言っちゃうんですよ。
「ムショ慣れ」しているんでしょうが、完全に刑務所にコントロールされちゃってる。
「そんなに幸せのラインが低くていいのかよ？いいオッサンが恥ずかしい！」
こんなことじゃシャバに戻った時、ゼッタイヤバいよ、と内心軽蔑しているんですが、
寝る時フトンの中で
「どんなお菓子出るのかな？」と自分も同じこと考えています。
何が出るかは、刑務所によって、その年によって変わるので、予測不可能です。
しかし、私のいた刑務所では、
5月5日と正月の特食は、ほぼ毎年固定でした。
5月5日は「子どもの日」なので、わかりやすいと思います。
毎年「かしわもち」が出て、終わり。一口で食べ終わってしまうんで、さみしい…
これは別の刑務所でも「かしわもち」が出ており、同じ所が多いらしい。
しかし、
入った頃は「かしわもち」が２個出ていたのに、いつの間にか１個に・・・
小さいのが２個出ていて、そのうち大ぶりの１個に変わったのか？
それとも「食い意地を張り過ぎて」２個出ていたとカン違いしているだけなのか？
特食は、物価は上昇しているのに予算は変わらないので、縮小傾向なのです(笑)。
まぁ、子どもの日＝かしわもちは当然すぎて、オモシロくないので終了。
サイズも小さく、１個なので、懲役たちもさすがに変わった食い方をしません。
一方で、正月はちょっとクセが出ていて、オモシロい。
年末30日か31日にまとめてドサッと、特食のお菓子が配られます。
それを正月の3日までに、好きなペースで食って良いワケなんです。
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2．正月の盛りだくさんな特食とは？
正月の特食は、しょっぱい菓子が１品、甘い菓子が２品、ミカンが数個です。
まず「正月の雰囲気を出す」ためのミカンでしょうが、ホントにいらない。
「ミカン出すくらいなら、もう１品、菓子を増やしてくれよ～」みんな言います。
嫌われ者のミカンは
「どこで仕入れてくるんだ？」というほど、小さく、見栄え悪い。
まぁ、刑務所で配るミカンだから、ハネもんの激安品なんだろう、と思うんですが…
まぁ、食べてみてもビックリ。
毎年必ずマズいので安定。まったく甘味がナシ。
「懲役たちのためにマズいミカンをわざわざ作る専門の農家と長期独占契約」
なんてしているんだろうか？と勘ぐるほどマズいんですよ。
これだけダメなミカンを探す方が大変だ。
それが2～4個配られます。
景気の変動か、ただ単にケチっているだけなのか、
年によりミカンの数は変動します。
ミカンは予算の帳尻合わせになっているワケです。
少ない年は
「今年は仕入れの刑務官がしくじったな」とか、妄想して楽しむんです。
さてしょっぱい菓子は、ポテチだったり、せんべいだったり、年により変わりますが
甘い菓子の１品は、なぜか毎年不動のレギュラーのモノがあるんです。
それは、
宝製菓の「ニューハイミックス・アソートビスケット」という詰め合わせ。
懲役たちの間では
「ハイミックスサンド」と呼ぶ、クッキー・ビスケット類です。
7種類のチープなクッキー・ビスケットが計20個程度入っている一袋。
田舎のバアさん家に置いてありそうな、昭和の香り漂う、懐かしい一品です。
どういう販路だが知らないが、拘置所にも置いてあり、他の刑務所でも出るという。
全国の懲役たちの間では、知らない者はいないほど有名だと思われます。
1袋300円程度らしいのですが、とてもその額は払いたくない味のレベルです。
まぁ、なぜか刑務所では、正月の特食に毎年出るんですよ。
甘いモノに飢えているので、まぁウマいこと。一気に食べるのを止めるのが大変！
出所した今はゼッタイに食べませんが、ホントおいしくいただきました。
なお、正月の特食がすばらしく良い年もありました。
恒例のハイミックスサンドに、ぼんち揚げ、ミカン２個・・・あれ？少ない？
あとからヤマザキのスイスロールが追加され、懲役たちは狂喜乱舞でした。
仕入れ担当の刑務官が言うには
「今年はガンバっちゃったよ」とのこと。
ホント、刑務官様、ありがたかったです。ステキな正月でした。
しかし、
反対にキビシイ所もあるワケでして・・・
やはり
恒例のハイミックスサンドに、ポップコーン、ミカン１個・・・
あれ？まさか、終わりじゃないよね？
まさかの２品、ミカンすら１個、という激辛の正月を迎えさせられました。
これが本来の刑務所。キビシイ！
「あのスイスロールは何だったんだろうな？
マボロシか？」
スイスロールくらいで喜ぶオッサンも情けないですが、正月から凹んでいました。
3．正月からガサ入れで懲罰！
そして、祭りの後には必ず
「後始末」というモノが待っているんです。
まず、
菓子類のゴミは「一切ゴミ箱に捨ててはダメ」なんです。
は？どういうことか？
1月4日の休み明けの朝に、全員まとめて別に捨てるんです。
こうやって、
ゴミまで回収したことを全員分チェックしているんです。
そして、1月4日、遅くても5日あたりには、
舎房に「捜検」が入ります。
昼間、懲役たちが工場で作業している間、
刑務官がコッソリ「ガサ入れ」をします。
コッソリというより、
抜き打ち検査です。徹底的に調べられます。
正月休みに出た、特食のお菓子などを隠していないか、チェックするんです。
こんなことは毎年のことなので、みんなわかりきっていることなんですが・・・
それでも、
何人も「隠しているのが見つかって」連行されます。
どーしてガサ入れするのがわかっているのに、バレるように隠すのかなぁ？
もちろん、
連行の後は取り調べ、100％懲罰です。
新年から、懲罰。
今年もロクな年じゃないな。
他人事ながら、思っちゃいます。
次回は、特食をめぐる変わった食い方、パワハラ？イジメ？についてお話しします。
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2015-09-13 15:00
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共通テーマ：日記・雑感
はじめまして。毎日楽しみに読ませていただいてます。
友人が黒羽にいるのでとても参考になります。
by NAO (2015-09-13 18:55)
こんばんわ。
特食に対する思い入れは、みんなハンパじゃなかったですね。特に年末年始は。
宝製菓の「ニューハイミックス・アソートビスケット」。
やはり黒羽でも出ました。何度も（笑）。
確かに安っぽい味でしたが、自分はこれが嫌いではなく
娑婆に出てからも１年くらいは買い物に行って見つけてはよく食べてました。
菓子パンもよかったですね。ヤマザキのアップルパイ、スイスロール。刑務所で好きになった味で、今もたまに食べてます。
特食を何にするか、決める権限が誰にあるのかはわかりませんが
所長が変わったとき、周りは特食がいいものになるかもなんて話してました。
実際、所長が変わっってからは年末年始の特食がよくなったんですよね。
なかなかいいチョイスの菓子+パックジュースが毎日。
前年までがショボかっただけに、かなり豪華でした。
いい歳をした男が一喜一憂する特食。
飽食の世の中で、刑務所に入ったことのある者でしかこの気持ちはわからないでしょうね。
by 1852番 (2015-09-13 21:39)
NAOさん、はじめまして
コメントいただき、ありがとうございますm(__)m。
こんなブログでも、少しはお役に立てているなんて、とてもうれしいです。
刑務所でも、施設によって日々の生活の処遇は結構違うことがありまして、興味深いです。まぁ、運用はそこの刑務所長次第でいくらでも変わり、決まってしまうということなんでしょうね。
これからも少しはお役に立てるような記事を書くように心がけますので、今後もお引き立てのほど、よろしくお願いいたします。
いつもお読みくださり、本当に感謝です。
またコメントをいただければ幸いです。
by きりたんぽ (2015-09-14 00:12)
1852番さん、こんばんは
いつもコメントをくださり、ありがとうございますm(__)m。
もうシャバに出ているというのに、黒羽の特食の話、とてもうらやましかったですね(笑)。
ホント、いい歳したオッサンが、たかが安っぽい菓子に一喜一憂する姿は、シャバの人が見れば滑稽を通り越して、恐怖すら感じるのではないでしょうか？
「この人たち、ゼッタイに頭オカシイ」って。
刑務所生活はイヤなことばかりでしたが、1852番さんのおっしゃるように、ムショで出たお菓子やジュースに思い入れが湧いてしまうモノがあります。
ハイミックスサンドは記事の中で「ディスって」しまいましたが、自分もスイスロールは妙に好きになってしまい、シャバに出てもコッソリ買って、食っていますね。
反対のモノもあります。
集会でチョコパイが出たことがあり「こんなにウマいモノだったのか！」と感動して食べました。
その感動が忘れられず、シャバに出てからコッソリ買って食べましたが、「あれ？こんなもんだったっけ？」とガッカリしたことがありました。
正月の黒羽、パックのジュースが毎日というのは、かなりガンバっていますね。うらやましい(笑)。
おっしゃる通り、この飽食の時代にはこの気持ちは入ってみないとわからないでしょうね。食べ物に対する感謝？愛おしさ？執着みたいなものが染み着いてしまいました。
いつもお読みくださり、ありがとうございます。
またコメントをいただければ幸いです。
今後ともお引き立てのほど、よろしくお願いいたします。
by きりたんぽ (2015-09-14 00:33)
はじめまして。いつも楽しく（？）拝見させていただいております。というか、病みつきになっています。ご本人は辛かった体験なのでしょうが、面白可笑しく書かれていて、いつも噴き出してしまいます。さらに凄いと思うのは、刑務官の横暴や、システムの理不尽さを公開して率直な思いを語りつつも、やわらかく「懲役になった自分が悪い」という事をベースに置き、それが実は全くブレていない事です。読ませていただいている人間としては、きりたんぼさん文才によってまるで今現在懲役中のように感じるきりたんぽさんと他の受刑者の方々を「がんばれ」と応援したくなってしまいます。「ここは刑務所。甘かった」という決めゼリフが出るたびに、「キター！」とにやけてしまいます。本を出されてはいかがでしょうか。絶対買います！
by ゆき (2016-05-16 19:35)
ゆきさん、はじめまして
コメントをくださり、ありがとうございます。m(__)m
温かい励ましの言葉をいただき、恐縮です。
その上で、鋭いコメントに「そうだったのか」と自分自身で納得してしまいました。(^^;)
少しは楽しんでいただければ幸いです。
刑務所をはじめ、犯罪、裁判・取り調べなど、イロイロな想いはありますが、結局のところ「自業自得」なんです。
そこは本音です。
しかし「どうせオレが悪い」とふて腐れても仕方がないので、このようなブログを書いております。
わずかばかりの罪滅ぼしと、少しはお役に立ちたいとの思いで始めましたが、コメント等、皆さまとのつながりが一番ありがたいです。
ちなみに「ここは刑務所、甘かった」は実際に刑務所にブチ込まれていた時から、懲役仲間たちで話していましたね(笑)。
出所後はツラい事ばかりですが、ささいな事にも感謝できるようになりました。
街路樹の新緑が美しいとか、ノラ猫が愛おしいとか、ちょっとしたことがうれしいですね。
マジメにつまらない話をしてしまいました。
またコメントをお待ちしています。
今後ともお引き立てのほどよろしくお願いいたします。
いつもお読みくださり、感謝です。
by きりたんぽ (2016-05-16 20:35)
>懲役たちのためにマズいミカンをわざわざ作る専門の農家と長期独占契約
その表現に、PCで見ながら声出して笑いました。
そこまでマズいミカンだとかえって食べたくなる気がするのは人間の不思議な好奇心ってやつですかね･･･
ブログ主さんは、「ムショメシ」という本はご存じですか？
ピンク色の表紙で、刑務所の食事を再現した写真を掲載、その詳細を細かく綴ったグルメ本です。私はamazonでその本の古本を購入したのですが、内容は思わず「美味しそう」と思わせるようなものが多く、でも刑務所に入った事がない私にとっては、やっぱり「本当なのか?」というのが正直な感想でした。
それでこのブログをネットで見つけ、読んでるうちに「やっぱり、そうだよね」と妙に納得している自分がいました。
by ポテト (2017-04-12 06:46)