刑務所の「細かすぎる」食事マナー②・・・メシは早く食べないといけないのか？

前回より、「刑務所の食事マナー」について、お話ししています。

まずは懲役どうしの「細かすぎる」食事マナーをご紹介する前に、どうしても

刑務所側から要求される「食事の決まり」をお話ししなくてはなりません。


前回は、メシ食う前から、いちいちうるさいことを

「刑務所の「細かすぎる」食事マナー①・・・メシ食うまでがすでにうるさい！」

にてご紹介しました。正座だけで懲罰の恐れアリとか、ワケわかりません。


今回は引き続き、刑務所が決めている「食事のルール」についてお話しします。

初日からキチンと覚えて、その通りにやらないと、刑務官様に怒鳴られますし、

同じ懲役の「配食係」から「モタモタするんじゃねぇよ」とイジメられちゃいます。


3．ごちそうさまでした、って何？
平日の昼食だけ、作業をする工場内の食堂で、全員そろって食べます。

「食堂」と言っても、テーブルとパイプいすがあるだけの殺風景な空間です。


全員が着席したのを確認して、担当の刑務官様の合図で、食事開始です。

開始は「姿勢を正してぇ、いただきます」と、フツーなのですが、

終了のあいさつが、シャバとちょっと違います。


「いただきました」

これが終了のあいさつなのです。どうして「ごちそうさまでした」ではないのか？

刑務官様にも尋ねてみましたが、昔っからコレだからなぁ・・・と不明。


「まぁ、ごちそうと言うようなメシじゃねぇから、ごちそうさまとは言わないんだ」

と、担当の刑務官様の分析ですが、確かにもっともらしい。

ムショのマズいメシに「ごちそうさまでした」と言うのは、かなり抵抗があります。


笑えるのが、少年刑務所あたりだと省略し過ぎて「原形がわからない」

成人刑務所だと、ちゃんと言うヤツ、言わないヤツ、いろいろなんですが・・・

なぜか、少年刑務所だと、みんなお約束のように、大きい声で省略します。


「いただきます」は「きます！」だし

「いただきました」は「した！」です

ラクって言えばラクなんで、全然良いんですがね。


担当の刑務官様も、「それが当然」のように、何も言いません。

「あざーっす」のようなモノなんでしょうかね？


後半は、「刑務所はメシをメチャクチャ早く食べないといけないのか？」の話です。

イメージとしては、飲み込むようにかき込んで、ものの５分で食べそうですけど・・・


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4．メシはムチャクチャ早く食うの？
刑務所では、ムチャクチャ早く食べないとダメというイメージがありませんか？

私もそう思っていましたが、一般の工場であれば、そんなことありません。

キビシイのは新入訓練工場や、分類センターなど、「懲役なりたて」の工場だけ。


「懲役なりたて」の工場は誰が決めたというワケではないのに、みんな急いで食う。

「他人と一緒ではない」モタつくことを、誰もが非常に恐れます。

刑務官様に怒られたらどうしよう、周りからイジメられたらどうしよう、と心配します。


そんな工場は、食事を全員食べ終わらないと、昼の休憩にならないシステムなんです。

だから、誰かがチンタラ食べていると、テレビも新聞も雑談もできない。

食べるのが遅い者は、泣く泣く残飯に出して、周りと歩調をあわせようとまでします。


ただ、これらは「懲役なりたて」の限られた工場だけです。はぁ、良かった。

少年刑務所は「全員が食べ終わらないと、昼休憩にはならない」ですが、

もうすでにTVもついているし、食事中に雑談するのもOKなので、あおられません。


成人刑務所によっては、NHKの朝の連ドラVTRを見ながらの食事なんです。

というワケで、15分間はしっかりと食事時間が確保されています。

この15分間が終わらないと、昼休憩には入らないので、ゆっくりメシは食えます。


残念ながら、「メチャクチャ早くメシを食わないといけない」ということもなく、

「メシをチンタラ食べていると、イジメられる」というのも、それほどありません。

いやぁ、期待に応えられなくて申し訳ないんですが、これは助かりましたよ。


食事のスピードでうるさいのは、雑居房での朝食・夕食の話です。

「配食」でメシが配られて、「空下げ」で食器を回収するまでの時間はまちまち。

急いで食べなくても間に合うし、雑居の皆さんに迷惑がかかるのはそれほどない。


独居はチンタラ食べられますが、雑居房はそうはいかないんです。

雑居では「スピード」ではなく、

先輩に「合わせる」ことが大事です。


先輩より早く食べ終わってしまい、ボーっと待っていると

「えッ？あおっているの？」

と、先輩からロコツにイヤな顔をされて、怒られます。


かと言って、先輩より食べ終わるのが遅いと

「おめぇ待たせてるんじゃねぇよ！」

「ホント、気遣いができないな！」

と、先輩から露骨にイヤな顔をされて、怒られます(笑)。


コレって、カンタンそうで結構ムズカシイんです。

どちらが怒られて、後々イジメられるかというと、早く食べ終わってしまう方。

９割の懲役は「あおってんじゃねぇよ！」と怒鳴りますね。


慣れないうちは、遅れたらいけないと、ダッシュでメシをかき込みます。

で、それで終ってみれば、大幅に早く食べ終わってしまって、怒られる。

じゃあ、今度こそ、と先輩の食べる様子をチラチラ見ながら食べると、これがヤバい。


「チラテンきってるんじゃねぇよ！」

（チラテンきる：チラ見すること。懲役の間では、最も下品で失礼な振舞いの一つ）

と、さらに怒鳴られます。こうなると、もうドツボです。


急いで食べると、早く食べ終わり、先輩から「あおっている」と怒られるし

合わせようとチラ見すると、先輩からもっと怒られる。

かと言って、遅れてしまうと「気遣いができないヤツだ」と怒られる。


そうなんです。一回しくじると、何やっても怒られる「恐ろしいシステム」です。

中には、どうしていいかわからず、固まってしまったヤツもいましたね・・・

ホント、刑務所って、最初が肝心なところです。


まだ、刑務所側から要求される「食事の決まり」の話が終わりません。

次回は、「うるさすぎる食事中の刑務官様の巡回」をお話しします。



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タグ：マナー 食事

コメント 3

チラテン？！
初めて聞く言葉ですが面白いですね～
チラテンきられて怒った先輩も以前は言われる側だったんですかね？
ある意味なんか体育会系みたいですね(^-^;
by まろん (2015-08-19 20:42) 

まろんさん、こんばんは

いつもお読みいただき、本当にありがとうございます。
そして、コメントありがとうございます。m(__)m

「チラテンきる」って、懲役ではもう当たり前すぎて、気にも留めず、フツーに使っていました。懲役たちの間では、メジャーなコトバだと思います（笑）。
体育会系は、ほんのちょっとでも先輩の「愛情」がありそうですが、懲役どうしではこの「愛情」というのは、これっぽっちもありません（笑）。そこが大きな違いですかね～？

ちなみに、似たコトバでは「耳テンきる」というのがあります。
わかりやすいと思いますが、他人の話に聞き耳を立てる、盗み聞きすることです。
シャバでうっかり使ったら「はぁ？」という顔をされました（笑）。

またコメントをいただければ幸いです。
今後ともお引き立てのほど、よろしくお願いいたします。
by きりたんぽ (2015-08-20 00:25) 

はじめまして｡｢いただきました｣は長野県の方言です｡
｢ごちそうさまでした｣という意味で北信､中信地方で使われています｡
私は県外出身なので､はじめて聞いた時はびっくりしました｡
by 長野民 (2017-08-31 20:46)