前回から、
仮釈放にまつわる話をお送りしています。
懲役、とくに初犯の懲役の最大の関心事
「何すれば仮釈放を多くもらえるか」
刑務所にブチ込まれた懲役たちは、自分のことしか考えられません。
前回は、大震災の後、寄付金の募集が刑務所側からかかった際
「寄付をすれば、早く出所できるらしい」
という
都市伝説に振り回され、ほとんどが寄付に殺到したというお話をしました。
社会の、被災者の、不幸も顧みず、それすらも自分の出所のダシにする
不謹慎ではありますが、
人間追い込まれれば、こんなもん、というのも事実です。
反省していないのではなく、
もういっぱいいっぱいなんです。許してやってください。
3．仮釈放はお金で買える？
「地震の被災者支援の寄付をすれば仮釈放が多くもらえる」のウワサに飛びつき
多くの懲役たちが、なけなしの報奨金・領置金から数千円を寄付しました。
ところが、やはり刑務所と言えども、社会は広い。
ケタ違いなヤツらがいました。
Fさんは40代で、眼光鋭く、常に落ち着いた人。
東京で手広く商売をされている社長さんですが、内容はアヤシイです。
「金持ちケンカせず」ではないですが、皆とは一線を引いています。
「Fさん、やっぱり今回の地震の寄付はしましたか？」
Fさんと仲良くさせてもらっていた私は、何気なく尋ねました。
「えぇ、そうね。当然、寄付したよ」
「どのくらい寄付しました？」
「ん？まぁ、少ないけどこれだけ」・・・と言って
5本の指を出しました。
「あ、自分も同じです。５千円寄付しましたよ」
「いやいや、もうちょっと寄付したよ」・・・Fさん、鼻で笑っています。
「えっ？５万円も寄付したんですか！」
「いや、５０万円だって」
「50万円も寄付したんですか！」
「いやいや、最初は100万円を寄付するつもりだったのよ」
―――はぁ？寄付に100万円だって？こっちは懲役の身、稼ぎはほとんどゼロよ！
「でもねぇ、
刑務所側から拒否されたわ。事務手続き上
50万円が上限だとさ」
「Fさん、いくら刑務所に持ち込んでいるんですか！？」
「うーん。確かこれくらいだったはず」・・・
また5本の指を出しています。
500万？5000万？ひょっとしたら5億なのか、もうそれ以上は怖くて訊けませんでした。
「どうせ寄付するなら、少額はダメ、人と同じことやってもダメよ」
Fさんの寄付に対する哲学と金銭感覚は、常人のソレをはるかに超えていました。
どういうこと？
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「あのさぁ、
みんなと同じことしても、仮釈放が良くなるワケないでしょ」
―――なんか、自己啓発本みたいっすね。
「
金額にインパクトがないと、埋没しちゃうからね」
―――は、はぁ・・・おっしゃる通りなんですが、凡人にはそのお金はないっす。
「
弁護士にさぁ、目一杯寄付しておけって言われたんだよ」
―――ていうか、まだ弁護士に相談しているのがセレブな証拠ですよ。
「
弁護士が言うには、寄付は弁済の一環と捉えられ、仮釈放に有利な条件になるって」
―――ええっ？ホントかよ！かなりテキトーな弁護士じゃね？
「それにしても、50万なんて大金、よく寄付しましたよね？」 改めて訊いてみると
「仮釈放をお金で買うんだよ」
―――はぁ？お金でどうにかなる問題なんですか？
「ドン、と寄付をしておけば、仮釈放に有利になって、半年でも出所が早くなるよ」
―――いやぁ、根拠が見えませんが、
半年って、スゴイ計算ですね。
「時間をお金で買うんだよ」
―――さすが社長。ビジネスの鉄則を言いますね。
でも、その瞬間、あの大物Fさんでも、
こんな都市伝説を信じるんだと驚きました。
いつも冷静沈着、ムダなことは一切しない、社長のFさんでも寄付するんです。
Fさんは
懲役10数年という長い年月をまだ残し、
希望を見い出せず、
少しでも効果がありそうなことに、
すがりついていたのです。
これが懲役、追い込まれた人間の姿なんです。
ちなみに、この寄付金の件ですが、
効果はどうだったかというと、
ハッキリとした正解は得られるワケがないですが、
自分が仮釈放の面接を受けた際、そのような話となりまして・・・
面接官は、笑って、
「寄付とかまったく関係ない」と言い放ちました！
えぇっ！うすうす気づいていたとはいえ、やっぱりそうなの？
Fさんに伝えたら、怒り狂うんじゃないか？
次回、仮釈放にまつわる寄付金などの話の続きをさせていただきます。
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2015-05-23 15:00
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