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刑務所のイジメ(11)・・・日用品・書籍を貢がせるイジメ(完結) [イジメ]

「刑務所のイジメ」について、続けてお話ししています。

まずご紹介したのは、暴力ではなく「貢がせるイジメ」

気弱なTくんが先輩に気に入られようと、必死になり付け込まれ、カネをはがされます。


詳しい話の流れは前回までの記事
刑務所のイジメ(8)・・・日用品・書籍を貢がせるイジメ(前編)
刑務所のイジメ(9)・・・日用品・書籍を貢がせるイジメ(中編)
刑務所のイジメ(10)・・・日用品・書籍を貢がせるイジメ(後編)
を、ぜひご覧ください。


長くなり大変申し訳ありませんでしたが、今回でこの話も完結です。

先輩たちに「貢いだ」おかげで、かわいがられていましたが、ヘタを打ってしまいます

Tくん、手紙で何度も親にカネをせびったことがバレ、刑務官様に怒られます。


それだけではありません。刑務官様の追及の手が襲いかかります。

先輩たちに貢ぐために、日用品を大量購入していることをカンづかれてしまうのです。

そりゃあ、同じようなモノを3カ月も続けて、1万円以上の爆買いしてりゃバレます。


Tくんは完全にバレて、懲罰になってしまうのか?

その前に、バレたことで先輩からボコボコにされないのか?

どちらにしろ、Tくんはロクなことがなさそうです・・・


7.懲罰をまぬがれる先輩たちの手口
石けん、シャンプー、歯みがき粉にタオル、ボールペンとあらゆる日用品・・・

Tくんは先輩たちの要求通り、毎月1万円以上も使い、大量買いしていました。

そんなことを3カ月も続けていたら、刑務官様に疑われ、捜検になりました。


捜検、それはガサ入れ。こうなると証拠が出てくるのがフツーで、ジ・エンド。

フツーはこのパターンでアッサリと連行され、懲罰になってしまいます。

ところが、先輩たちの「プロの手口」がカンペキでした


日用品は、工場での作業中に一人ずつ呼び出されて、配布されます。

その際、購入した一つ一つの品を刑務官様がチェックして、本人に渡されます

そして受け取った品の袋や箱に、その場で名前を書くよう命じられます


他人へあげたり、取り上げたりする不正を防ぐために名前を書かされるのです。

もし他人へ渡っても、名前が書いてあれば「捜検」の際にバレてしまいます。

動かぬ物的証拠で、100%懲罰決定


しかし、そんなことはカツアゲ、イジメ上級者の先輩たちには百も承知でした。

Tくんが受け取る時には名前を書かないよう、事前にキビシク指導!

普段は命令ばかりのくせに、こんな時は手とり足とり、みんなで熱血指導です。


「おい!T。慌ててやるんじゃねぇぞ!挙動不審になるから、ゆっくりやれ!」

万が一バレた時のために、Tくん本人が使う最低限の品物だけ名前を書かせます

残りの大量の品は書いたフリだけで、コッソリTくんの小袋に入れさせていました


実は舎房に帰る直前に、刑務官様が「持ち込み確認」を行い二重チェックします。

舎房に持ち帰るモノを、不正がないか、名前が書いてあるか、確認するのです。

しかし、刑務官様もイチイチやるのはメンドくさいらしく、ほとんど見ません


先輩たちは「名前を書かずとも、ノーチェックで入る」ことをよく知っていました。

刑務官様のサボりを逆手に取り、Tくんの購入した品を、部屋で山分けです。

名前も書いておらず、袋や箱を捨ててしまえば、まるで誰のものかわかりません。


証拠も一切残らず、捜検されてもまったく余裕!

万が一「どうして名前書いていないんだ!」と言われても、すっとぼければOK

「あれ?ホントだ!忘れました!すみません!」と言えば、これ以上追及できません。


この日頃からのTくんへの「指導」が、まさに役立ちました!

今回、Tくんの雑居は全員が「捜検」で、荷物をすべてチェックされたのです。

しかし、誰の荷物にも「Tくんが貢いだ」という証拠の品は出ないワケです。


Tくんが貢いだモノ自体はみんなで持っているのですが、刑務官様にはわかりません。

何せ名前も書かれていないから、証拠にならないのです。

アヤシイけれど、証拠不十分にて、おとがめナシです。


先輩たちは、してやったりです

一方で刑務官様は「日用品のやり取り」があったのは間違いないのに、何もできず…

刑務官様、半ばメンツを潰されました


刑務官様このまま黙っていられません



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8.貢がされた男の悲しい末路
刑務官様は、大ハジをかかされました。

日用品をはじめ、モノのやり取りをしている「状況証拠」をつかんでいたワケです。

自信満々に雑居を「捜検」したら、なんと「物的証拠」はゼロ


完全に懲役たちのやりたい放題で、「ナメられて」しまいました。

刑務官様はあきらめきれず、後日Tくんを呼び出し、問い詰めます。


「オイ!Tちょっと来い!」

T「ハ、ハイっ!」

「あんなに日用品を買っていたら、私物バッグに入りきらねぇだろ?」

T「あっ、いや・・・入ります」

「オカシイだろ?あれだけ買ったら、1カ月やそこらで使い切れるわけがねぇ」

T「いや、使っちゃうんですよね・・・」


Tくんはどもってしまい、下を向きっぱなし、身体をモゾモゾさせ、挙動不審です。

「Tくんは、ウソをついている」と、誰の目にもわかります

しかし、これ以上はどうにもなりません。


刑務官様、今度はTくんの雑居の先輩たちを呼び出して、さぐりを入れます

「Tが日用品を毎月大量に買っているが、アイツ本当に使っているのか?」

「えっ!そうなんですか?そう言えばたくさん買っていたかも・・・」

「そんなにたくさん買っても、バッグに入りきらねぇだろ?どうしてるんだ?」

「いやぁ、そう言われれば、日用品を景気よく使っていたかも・・・」

「まさか、オメェら、Tからもらったりしてねぇだろうな?」

「はぁ?どうしてアイツからモノもらわなくちゃならないんですか!」

「それなら、いいんだけどよ・・・」

先輩たちは、しつこく事情を訊かれても、「すっとぼけ」ます。

さすが犯罪者たち(笑)、まるで初めて聞いたかのように、カンペキな演技です。


刑務官様は誰も懲罰にできず、どうしても納得できなかったようで・・・

なんと、Tくんを他の雑居に転房させました。

「強制的に引っ越し」させることで、事実上のペナルティを与えたかったんでしょう。


これがTくんにとって、マズかった!

「雑居を転房」にて、貢ぐことから解放されて、喜んでいるかと思いきや、その反対

これが致命傷となり、Tくんは大ピンチに追い込まれました。


別の雑居に転房させられたことで、先輩たちを激怒させてしまったのです。

先輩たちは「貢いでもらえなくなった」ことを怒っているのではありません。

先輩たちはTくんが裏切ったと決めつけて、怒っているんです


「どうせTは刑務官様に、もう貢ぐことに耐えられないと泣きを入れたんだろ」

「Tは刑務官様に、詰められて、貢いでいることをバラしたんだろ」

「だからオレたちから逃げるため、雑居を変えてもらったんだろ」


完全に裏切り者扱いです

Tくんへの扱いは日に日に厳しくなり、工場で歩くだけで怒鳴られていました。

パワハラMAX、他の者も巻き込まれたくないから、誰もTくんに話しかけません。


Tくんは工場でいやがらせ、イジメをこれでもか、というほど浴びる毎日となりました

もともと不器用で気が小さいTくん。こんな仕打ちに耐えられるワケがありません。

1週間ほど経ったある朝、Tくんは雑居から出てきませんでした


「出役拒否」です

朝、工場へ行くことを拒否し、部屋に引きこもることですが、一発で懲罰、アウト

Tくんはむしろ被害者ですが、Tくんだけ懲罰


さんざん貢がされた挙句、使えないと分かったら、イジメられる・・・

刑務官様のおしおきを、Tくんの裏切りだと決めつけられ、イジメられる・・・

そして最後は、Tくんだけ懲罰です


Tくんは7日間の懲罰を喰らい、その後別の工場に送られ、イチからやり直しです。

悲しいけれど、これが刑務所

懲役たちの中で生き抜くのは大変です


ホントのところは、刑務官様がおしおきのために、嫌がるTくんを転房させたのです。

Tくんは貢がされ、カネをむしり取られますが、満足していたのです

そうしていれば、先輩たちはかわいがってくれ、守ってくれるんですから・・・


でも「悪いのはホイホイ貢いだTくんだ」となってしまうのが刑務所の理論。

「自分の身は自分で守る」を痛感させた、「アトムくん」の貢ぎのイジメでした。


次回は刑務所のイジメのバリエーションについて、お話しします。


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コメント 11

忍者福島

いじめられているほうが懲罰とは・・・
刑務所は(歪んだ)社会の縮図って感じですなあ。
by 忍者福島 (2018-03-04 00:54) 

000573

自分は元懲役で、楽しみに見させて頂いていましたが壮絶ですね。 ここまでドラマティックなイジメもない工場でした。

自分は若い房長(雑役)の部屋がキツかったのですが、3ヶ月ほどで反省文が入り仮釈が近い時期になった頃に独居に移れました。
by 000573 (2018-03-04 04:40) 

000573

追記 私物購入はうちでは既に番号が振られており、担当台近くの机で指印を押して私物袋に入れる感じでした。

それでも私物のやり取りはあり、どうやって持ち込んだのかマジック所持の人に借りて振ってる番号を消して、マジックで自分の番号を書き込み、筆箱や電気かみそりを貰ったりしました。 切手とかは基本だと思いますし、本や新聞を買わされる人は居ました。 

仮釈間近の寮移りの際は同じ工場で前の部屋の人が居て、いじめられていた人が石鹸を食べさせられたり(泡まみれで食えないらしいです)腕を折られて病棟に行った事など聞かされました。 房長は雑役でうまくやってる人で担当の評価もいいですからね、骨折の件も揉み消されたのでしょうか。 懲罰棟で話した人で顎を折った(自称)人がいましたが、その人は懲役に加えてまた裁判があるそうで、オヤジの力は凄いんだと思いました。
by 000573 (2018-03-04 10:50) 

石井

イジメていた人達がまだ刑務所にいる事を願っています
by 石井 (2018-03-04 20:08) 

なないろ

きりたんぽさん、こんばんは。
いつも楽しく拝読させてもらっております。

彼の出所についてのしつもんです。
満期は6月14日。
懲罰は5日間、1度だけありました。

まだ彼にはパロールが来ません。少しでも早く出られるなら もう来ていてもおかしくはない時期なのですが。

やはり、間髪いれずに再犯である事、懲罰が1回などのあたりで仮釈放は望めないのでしょうか。

厳しい意見でも構いません。
お返事頂戴できたら光栄です。
by なないろ (2018-03-04 23:50) 

元炊場

いつもご苦労様です。
このオチは想像のはるか上でした。
こんなこともあるんですね。

なないろさま
僭越ですが経験談を。
まず刑期と、懲罰の時期がポイントです。
刑期が短ければ仮釈もらえる期間も短くなります。
初犯で目安は刑期の4分の1から5分の1くらい、再犯ですともっと短くなります。
あと、懲罰の時期ですけど、刑期の前半で受ける分には概ね影響はないです。
が、後半、そろそろパロールって時期に受けてしまうと、一旦白紙にされてしまいます。
そこから再度審査にかかるので、仮釈時期は数ヶ月単位で遅れます。
ご参考になれば…
by 元炊場 (2018-03-05 21:31) 

きりたんぽ

忍者福島さん、こんばんは。
コメントをくださり、ありがとうございます。m(_ _)m

懲役たちは全員「悪いことをやったヤツら」ですが、貢がせる先輩たちを見ていると、ホントに悪いヤツらだなぁとイヤな気分になったものです。
悪いヤツらの「レベルが違う」といった感じでしょうか。

自分の特性・キャラを自覚し、うまく立ち回らないと、こうして刑務所でも骨までシャブられます。

またコメントをお待ちしております。
いつもお読みくださり感謝です。
by きりたんぽ (2018-03-06 04:11) 

きりたんぽ

573番さん、こんばんは。
コメントをくださり、ありがとうございます。m(_ _)m

そうなんですよね、どこの刑務所に行っても、方法は違えど「貢がされ」ることはあるんですよね。
刑務所まで来て、カネを吸い取られ、カツアゲされるとは本人も予想していなかったでしょう。

房長や班長など、刑務官様に気に入られている懲役たちは、多少のイジメ・規則違反に関しては、刑務官様が目をつむって握りつぶすのは「常識」ですよね。
刑務所だからと言って、正しいことが通るワケではありません。

その辺を理解しないと、うまく立ち回れないです。
自分はできるだけ関わらないようにしていました(笑)。

またコメントをお待ちしております。
by きりたんぽ (2018-03-06 04:21) 

きりたんぽ

なないろさん、こんばんは。
元炊場さんのコメント通りだと思います。

追加することと言えば・・・
仮面接(準備面接)から出所まで、短くて2ヶ月、長いと半年以上かかります。
というコトは、仮釈放はキビシイか、あってもごく短期間のような気がします。

元炊場さんのおっしゃる通り、懲罰を懲役期間の後半、とくに終盤で受けてしまうと、仮釈放にかなり響きます。

あと3ヶ月ですから、とにかく無事を祈りましょう。
by きりたんぽ (2018-03-06 04:25) 

きりたんぽ

元炊場さん、こんばんは。
コメントをくださり、ありがとうございます。m(_ _)m

さすが元懲役の的確なアドバイスも併せてくださり、感謝いたします。

今回のブログ記事の内容ですが、自分も当時は唖然としました。そして切なくなりましたよ。
ホント、懲役たちとは依存せず、程よい距離で付き合うのが大事だなぁと思います(実際にいると、なかなかできませんが)
刑務所だろうが、弱いヤツは骨までシャブられ、強いヤツはトクをするのは社会と同じ。
何だか矛盾した場所でした。

またコメントをお待ちしております。
いつもお読みくださり感謝です。
by きりたんぽ (2018-03-06 04:30) 

もも

内夫が大阪刑務所にて受刑中です。
このブログで随分助けられました。ありがとうございました。
大阪に移る前に滋賀拘置所で内妻申請が通っていたので、大阪に移ってからは特に書類は来ませんでした。そのまま内妻申請が通りました。
申請の時には、いくつかの質問に答える形で書類が届きました。
今は面会もできますし、手紙も送れますので不自由はありません。
唯一、大阪刑務所までの交通費と時間がかかるのが大変です。
待ち人すると決めましたが、辛い選択ですね。
きりたんぽさんも仕事や生活で大変でしょうがまた記事待っています。
頑張ってくださいね。
by もも (2018-03-25 18:40) 

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