1．カネがかからないは大間違い
刑務所ではまったくカネがかからない、タダで暮らせると思っていませんか？
たしかに
建前では「一切カネがかからない」ことになっています。
もうひとつ、刑務所にいる限り、
一切「現金」に触れることはありません。
だから、カネはいらない、カネはかからない、という錯覚に陥りますが・・・
しかし
実際は、刑務所でもカネはかかります。
たしかに
「一切カネがかからない」生活は可能なんですが、不都合が多すぎる！
刑務所から支給のモノ、これを
「官物（かんぶつ）」と言いますが、
自費で購入しなくても、この
「官物」で、すべて済ませるようにできています。
と言っても
「最低限のモノ」しか、官物では用意してくれません。
パンツはまさかの汚いお古、
くつ下も真冬だろうが薄手の粗悪品、
運動靴と言えば、布にゴムを張り付けただけの「奇跡的なひどいクツ」
真冬の
防寒着は、綿の薄手のトレーナーのようで、寒くてとても耐えられません。
官物で済ませようとすると、かなりの覚悟と根性を要求されるのです。
衣服だけではありません。日常の消耗品だって、官物で通すのはツラいです。
大便のチリ紙から、タオル、石けんまで・・・残量を気にしてチマチマ使うのは、不便！
ハッキリ言って、
人として最低限度の生活ができないラインです。
そんな貧相な生活でも「どうせ刑務所の中だから」と割り切れればいいのですが・・・
もう１つ、他人の目というものがあります。
見栄やメンツを捨てられるのか？？？
官物で済ませ、一切カネを使わないと
「どケチなヤツ」と見下されます。
「どうせアイツはシャバでもロクな仕事、稼ぎじゃなかったんだろ」
と、バカにされ、工場で舎房でエラそうな顔をしても、鼻で笑われます。
またコミュニケーションも図れず、話題についていけません。例えば
集会。
月１回の集会は菓子が食えますが、コレも
自費。
カネを使わないと菓子も食えず「そこまでやるか？」と白い目で見られます。
そして、カネを使わなければ、本や雑誌も買えません。
ましてや雑居に入ってしまうと
「お付き合い」で本や雑誌を買うことが求められます。
この
「お付き合い」ができないと「使えないヤツ」と見下されます。
これは次回にお話ししますが、カネを使わないと、人間関係もウマくいかないのです。
ケチなヤツが嫌われるのは、シャバでも刑務所でも、同じこと。
刑務所では「カネをまったく使わない生活」はできますが、全然おススメできません。
それでは、全然カネを使わないと、どうなるのか？
「官物」で済ませる刑務所ライフをちょっとご紹介します。
まさに
「極限まで切り詰めた生活」と言えるでしょう。
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2．官物はツラいよ
カネを持っていなくても、カネを使わなくても、日々の生活はできます。
消耗する日用品まで、
最低限のモノは「官物」が支給されるからなんですが・・・
この
「官物」、使ったらまたもらえる、という甘いモノではないんです。
無駄づかい防止のため、支給の制限があり、
これが結構ケチくさい！
石けんは１カ月に１個だけ
コレで
手洗い、洗面、入浴まで、すべてを済ませないといけないワケで、キビシイ！
とくにフロの際、お湯でゴシゴシやれば、あっという間にすり減っちゃいます。
ちなみに、
シャンプーは「官物」には存在しません。
シャンプーは最低限のモノに入らず！
貧乏人は石けんで頭を洗え、ということ。
シャバで「シャンプーなしの生活」というのは考えられないのですが・・・
しょせん、
受刑者なんて全員ボウズ頭。シャンプーいらねぇと言われても納得です。
それにしても、石けんで頭洗うと、頭皮がつっぱってフケが出る(笑)。
ハブラシ、歯みがき粉だって
「官物」はあります。
ハブラシは安い旅館に備え付けてある、あの白い粗末なハブラシ！
「アレって、使い捨てじゃねぇの？」と思いますよねぇ・・・
一度もらって使ったら、一回で毛先が開いてしまい、ガックリ。
この粗末な
ハブラシも、１ヶ月に１本。
今どきこんなひどいハブラシ、どこで売っているんだ？特注か？
それと比べ、
歯みがき粉はシャバのモノと同じで、快適です。
私の所は
「ガード・ハ◯ー」という安物とは言え、定番の品。
「刑務所も気が利いているじゃないか！」と思いましたが・・・
この
歯みがきチューブ１本を３ヶ月もたせないとダメ！
やっぱり刑務所！甘くはなかった！
毎日ヒマだから歯みがきを念入りにしますが、
あっという間になくなります(笑)。
しかし、
チューブの歯みがき粉になったのは、わりと最近のこと。
私がブチ込まれた当初は、
ホントに歯みがき「粉」だったんです！
粉ですよ、粉。
粉末の歯みがき粉なんて、生まれて初めて見ました。
以前の記事でもご紹介しましたが、茶色のポチ袋に入っているんですよ。
口の中にホントに入れていいのか？クレンザーとかじゃないのか？かなり不安！
歯みがき粉が
「粉」なんて、いつの時代で止まっているんだ？
そしてゼッタイに必要な消耗品と言えば
「チリ紙」
刑務所では便所に備え付けの「トイレットペーパー」がありません。
というか、
トイレットペーパーという概念がないんです。
刑務所では、
便所にはトイレットペーパーではなく「チリ紙」を使用。
便所に行く時は、舎房でも工場でも、必ず自分のチリ紙を持参です。
忘れたり、使い切ってしまうと、拭くモノがないという恐ろしいことに！
食器をぬぐうのも、鼻をかむのも、ケツを拭くのも、すべて「チリ紙」
すべてを「チリ紙」１種類で済ませるワケでして・・・
このチリ紙は水に溶け、便所に流せるベンリな品ではあるんですが・・・
シャバのティッシュのような、白くて、やわらかくて、繊細なモノじゃありません。
昔の汲み取り便所に備え付けてあった、B5版くらいの「白くない」あの紙！
しわが寄って、ゴワゴワして、肌に悪そうな（とくに痔）紙です。
(年寄りに訊いたら、
「アレはチリ紙と言わん。落とし紙と言うんじゃ」とのこと）
「官物のチリ紙」は、一度に小包１個分くらいの大きさの量をもらえます。
「おぉ！結構な量をくれるじゃないか」と思ったら、大間違い。
粗悪なチリ紙はかさばるので、実際の枚数は300枚程度。
コレを２週間持たせないといけません。
ゴワゴワのわりには、破れやすいので、
大便の際はケチるとヒドイ目にあいます。
というワケで、３枚も４枚も重ねて使うので、けっこう消費は激しい！
チリ紙の残り枚数を気にしながら、ケチって大便をするのは、気が滅入ります。
「まだこんだけ残っているから、思いっきり拭けるな！」
こんなことにビビったり、喜んだり・・・刑務所は人間をダメにします(笑)。
こんな粗悪なチリ紙、まだ日本に売っているのか？と思ったら、売ってましたね。
東日本大震災の直後、日用品の買い占め騒動の際、TVに出ていました。
トイレットペーパーなどが、すべて売り切れたカラの棚に、残っているモノが！
なんと、残っているモノこそ、官物のチリ紙とそっくりなモノだったんです。
「まだシャバでも売っているのか！」衝撃でしたが、よく考えると・・・
「買い占め騒動になっても、売れ残るチリ紙って、何なのよ！！」
ちなみに、
官物の石けんは１個100円相当、ハブラシは1本100円以下でしょう。
歯みがき粉は100円ちょいで売ってますし、
チリ紙も100円ちょいです。
そこまでして、カネを使わず不便な生活に耐えるのか？ある意味、尊敬です。
「刑務所では１円も使いたくない」
「シャバに出た時に、１円でも多く残しておきたい」
その気持ち、わかりますが・・・
そのくらい自費で買おうよ。
では刑務所ではどれくらいのカネが入り、そして出て行くのか？
現実には
「どのくらいの金額があれば、問題なく生活できるのか？」
次回は、なんちゃって「刑務所の経済学」をお話しします。
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2015-11-21 15:00
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共通テーマ：日記・雑感
刑務所には一年生あたりどれぐらいの金額を持って行けば良いのでしょうか？
ちり紙は無くなったらもらえないのですか？
無いまま暮らせませんよね？
by じじ (2015-11-21 16:24)
きりたんぽさん、こんばんは(^^)
月イチの集会とは、あの映画観ながらお菓子とジュースが食べられる集会の事ですか？
あのお菓子は自費で購入なのですね？
ビックリです
地獄の沙汰も金次第じゃないですが、刑務所でどれくらいのお金が必要か興味あります！
次の記事楽しみにしてます(^^)
by まろん (2015-11-21 17:56)
じじさん、こんばんは。
コメントをくださり、ありがとうございますm(__)m。
ご質問の件ですが、この「刑務所でのカネにまつわる話」シリーズで、続けてお話ししていきますので、それまでお待ちください。
申し訳ありませんが、今答えると、この先の記事のネタとモロかぶりなので・・・(笑)
当たり前ですが、多少のおカネは持って行くべきですよ～
細かい額は、今後の記事をお読みくださいね。
いつもお読みくださり、ありがとうございます。
by きりたんぽ (2015-11-21 23:31)
まろんさん、こんばんは(^o^)
コメントをくださり、ありがとうございますm(__)m。
月イチの集会は、映画見ながら菓子を食う・・・その通りでございます。
そうなんですよ、菓子はもちろん自費で購入です。
スズメの涙ほどの作業報奨金から、菓子代約500円が引かれるのは、結構デカいです(笑)。
刑務所だろうが、カネはないと泣きを見ます。
刑務所では、どれくらいのカネがかかるのか？今後の記事にてお伝えしますので、ぜひお読みくださいね。
またコメントをお待ちしております。
いつもお読みくださり、感謝です。
by きりたんぽ (2015-11-21 23:39)
きりたんぽさん、またお勉強になりました。
有り難うございます(^^)
てっきり集会のお菓子は、懲罰などない３類？以上の受刑者にご褒美的に配られるものだと勘違いしてました笑
さすが刑務所！そんな甘くないんですね～(^-^;
by まろん (2015-11-22 07:09)
私も、留置施設で約１００日過ごしましたが、
その時でさえ、おカネの必要性を痛感しました。
私は、１円も使わず最後まで過ごしましたが、
週に３回ほどある、自弁購入の日には、
他の留置されている人たちが、
チョコレート、温かいみそ汁、ジュース等を購入してるのを見ると、本当に羨ましく、辛かったです。
看守員も、今まで長期留置者が１円も使わないで最後まで過ごした人は聞いたことがないと、驚き呆れられてました。
裁判が終わり、釈放（執行猶予ですが）となり、
留置施設を出て行くときには、
”今度入るときには、絶対、大金持ってくるから！”と看守員に
うそぶいて来た程でした。
それほど、おカネがないと、辛い目を見ます。
地獄の沙汰もカネ次第を肌身で感じ取ってきた１００日でした。
たった１００日程度の留置施設でさえ、こうだったのですから、
況や、刑務所では本当におカネがないと話にならないと思います。
by ソフィー (2015-11-22 18:10)
最近少し気になったのですが、
『待ち人』という言葉をこの類いでよく目にします。
この『待ち人』というのは、刑務所関連で確立された用語なのでしょうか？
待ち人と言いながら待たない方が殆どだとも聞きました。
主観ですが、自分に酔ってる的な言葉自体に違和感を感じてしまいました。
辛口でスミマセンm(__)m
by まろん (2015-11-22 18:21)
ソフィーさん、こんばんは(^o^)
コメントをくださり、ありがとうございます。
スゴいエピソードに、ただ驚きました！
留置場で一銭も使わなかったとは！！
それはそれは不便で、ツラい日々だったことと思います。
全員が同様に使えないなら、それほどツラくはないですが、周りがカネ使って、食ったり飲んだりする姿を見せつけられたら、そりゃしんどいです。
刑務所はカネを使わなくても、すべて官物で過ごすことができる、必要最低限のモノは支給される、という建前ですが、やはりカネがないと不便でミジメです。
カネのありがたさ、大切さを、痛感しますよね。
留置場生活、本当にお疲れさまでしたm(__)m。
またコメントをお待ちしております。
いつもお読みくださり、感謝です。
by きりたんぽ (2015-11-23 02:07)
まろんさん、こんばんは(^o^)
いつもコメントをくださり、ありがとうございますm(__)m。
たしかに、「待ち人」というコトバはよく聞きますよね。
受刑者として中にいた時は「待ち人」というコトバは聞きませんでした。
ムショ用語ではないと思います。
しかし、ある日突然彼氏やダンナが逮捕され、一人残された方はショック、パニックだと思います。
経験のない最悪の出来事、誰かに相談できることでもない、何をしたらよいのかもわからない・・・
孤立して心細いし、自分の心を保つのは容易ではないと思います。
ですから、出所まで待てずに、離婚など関係が切れてしまう人が多いのでしょうね。
待たない人の方がフツーであり、健康的な考えなのかもしれません。
「待ち人」という表現で、少しでも自分を励ましていかないと、とてもツラいのではないだろうか？と想像しました。
適当な表現もないですし・・・
表現はどうであれ、出所まで待ってくれるというのは本当に心強く、ありがたいことです。その愛情と忍耐に、心から敬意を表します。
またコメントをお待ちしております。
せっかくですから、ガンガンご自身のご意見をお聞かせください。
とても考えさせられます。
いつもお読みくださり、感謝しております。
by きりたんぽ (2015-11-23 02:21)
V(-￥-)Vもブタ箱では、ノートを1冊買っただけでした。
理由
「境界型糖尿を発症していたので、過度のカロリー摂取を禁止されたから」
そんなわけで、タダでさえ量が少なくて味気ないブタ箱飯だけで2ヶ月近く過ごした（再逮捕くらったから通常の2倍）おかげで・・・
糖尿の症状が完治してしまった ヽ(´∀`)ノ
わけです。
体験で自弁を食えなかったのは残念ですが、今となっては笑い話ですねぇ (￣-￣ )
by V(-￥-)V ごとう さとき (2015-11-23 16:14)
ごとうさん、こんにちは(^o^)
コメントをくださり、ありがとうございますm(__)m。
貴重な体験談を教えていただき、恐縮です。
糖尿病が治ってしまったのは良かったですが、留置場の弁当はマズいですよね。
署によって違いますが、私のいたところは、自弁の弁当もあまり中身の変化がなくマズいと不評でした。
さらに1,000円も取られるというぼったくり。どう見ても500～600円の弁当でしたが、完全に足元を見られていますね。
誰も2回目は買わない代物でした(笑)。
またコメントをお待ちしております。
いつもお読みくださり、感謝です。
by きりたんぽ (2015-11-23 17:02)
きりたんぽさん、こんばんは(^^)
お返事有り難うございます。
待ち人待ち人と可哀想アピールする人に限って待たない印象が勝手にありました。
そればかりではなさそうですね！
またお勉強になりましたm(__)m
by まろん (2015-11-23 20:57)
留置場での弁当について、一言。
私が留置されていた時は、朝、昼、晩、と全て、
セブンの弁当でした。
値段は１食あたり４００円前後。
ただ、セブンの弁当ですので、種類にも限りがあるわけで、
１週間に３～４回同じものが出てました。
たまに、新商品が出てくるのが楽しみでした。
ただ、さすがに１００日前後、全てセブンの弁当だと飽き、
留置所から出て、セブンに入ったときは、
弁当を見るのも嫌でした。
いまでも、同じものが販売されているようです。
ただ、土曜日の朝だけは、パン食（菓子パン）でした。
自弁で甘いものを一切買わなかったので、
唯一の甘いものが食べられる菓子パンの日が
どんなに楽しみにしたことか。。。
留置所みたいなところにいると、
甘いものが食べたくなるのってのは本当ですね。
釈放されて、一番最初に食べたのは、
コンビニで買った、チョコレートでした。
チョコレートをあれほど、むさぼるように食べたのは
今まで生きてきて、後にも先にも、あの時だけですね。
留置所では、甘いもの欲しさに手が震えてましたから。
by NO NAME (2015-11-23 22:55)
NO NAMEさん、こんばんは(^o^)
コメントをくださり、ありがとうございますm(__)m。
貴重な情報をいただき、大変勉強になりました。
留置場の食事は、各県ごと、いや警察署ごとに違うとは懲役仲間から聞かされていましたが、驚きましたね。
セブンの弁当が出るところもあるんですね！
そして予算は400円というのは同じなんだと、これまた納得しました。
私のいたところは、地元業者の仕出し弁当で、ホントにマズかったので、セブンの弁当がうらやましいです(笑)。
それに、朝は毎日パサパサした食パンだったので、その点でもうらやましいです。
「シャバに出た後、セブンの弁当を見たくもない」とか、リアルな感情でグッときました。
出所後にチョコレートをむさぼり食う光景が目に浮かび、涙が出そうになりました。
私は出所後にむさぼり食ったのは、「ビール」でした。
「幸せの黄色いハンカチ」にて高倉健が出所後にラーメン屋でまずビールを震えながら飲む、アレが自分で再現されるとは思いませんでした(笑)。あんなにカッコよくないですが・・・
久しぶりに飲んで、あっという間に酔ってしまいました。
ホント、夢の中でもビールが出て来て、飲みたい飲みたいと思っていました。
アレは二度と体験したくありませんが、やった者でないとわからない独特の感覚ですね。
またコメントをお待ちしております。
ブログをお読みくださり、感謝いたします。
by きりたんぽ (2015-11-23 23:39)