「刑務所でお菓子が食える」＝「特食」ことについて、お話ししています。
刑務所では祝日になると
「祝日菜」と言って、お菓子が一人一つずつ全員に配られます。
懲役たちはコレを
「特食」と呼んでいます。
全員に配られるので、
予算は60円、品数は１品で、量は少なくショボいです。
それでも、
滅多にない甘いモノが食えるチャンスなので、楽しみにしています。
「どうにかして、たくさん、他人の分まで特食を食いたい」内心みな思っています。
20代の若者ばかりの雑居なら、新入りや下っ端は
「シャリあげ」されて食えませんが
フツーのオッサン部屋であれば、バレて懲罰がイヤなので、
「シャリあげ」しません。
それでも、
新入りがスンナリと楽しく、特食のお菓子を食うのは気に喰わない！
そこで、ヒマな懲役たちは
サラ（新入り）
にあれこれイチャモンをつけるんです。
「新人教育」という名の「サラへの指導」なんですが、まぁ
パワハラですね。
それが１回、２回でできるようにしないと、エスカレートしてイジメになります。
前回は、今回のお話をするための予備知識として、新入りのイジメについて
「
刑務所のイジメ①・・・雑居ならどこでもある「新入りイジメ」」
にて、詳しくお話ししました。ぜひご覧ください。
さらに前々回は、大相撲で「賭けごと」して、特食をスンナリ食わせないことを
「
刑務所でお菓子が食える？⑤・・・他人のお菓子をふんだくる方法」
にて、詳しくお話ししました。ぜひご覧ください。
刑務所で、賭けごとは日常茶飯事で、絶好の退屈しのぎになりますが、問題が・・・
上の者も負ける確率は同じで、負けたら下っ端にお菓子を取られる心配があります。
下の者にお菓子を取られてちゃ、屈辱だし、ストレスは余計溜まります。
今回は、他人のお菓子はふんだくれないけれど、
しつこくジャマするお話をします。
シャバではこれをパワハラ？イジメ？と言うのでしょうか？
これが
刑務所流「正しいサラへの指導」ですが、たかがお菓子にスゴイ情熱です。
1．サラへのイジメ？いえ、指導です
サラにとって、雑居に入った最初の１か月は、研修期間、見習いの居候状態です。
この期間にキチンとできないと「ダメなヤツ」扱いになり、多くはイジメられます。
そのために必死で覚えようと、サラ（新入り）は頑張りますが、
勝手にやってはダメ。
その雑居の「ルール」を先輩にイチイチおうかがいをし、
教えてもらわないとダメ。
「オメェよ！ちゃんと上に、やり方を確認したのかよ！」
たとえ見て知っていても、わざわざ「おうかがいをたてる」がないと怒られるんです。
たかがお菓子を食うに関しても「ルール」があり、
おうかがいをたてないとダメ。
シャバでは非常識なんだけど、雑居では理屈にかなったルールが存在します。
だから前日までに、教育係の先輩に教えてもらい、
確認しておかなければダメです。
ルールと言っても、小机にチリ紙を敷け、ハシを使って食え、とか
変化球ばかり。
先輩たちに訊かないと、サラにとっては、まず想像もつかないモノなんです！
教えてもらっても、オカシイものばかりのルールなんで、うまくできない・・・
だから100％の確率でサラはヘタを打つんで、先輩たちには都合がいい。
「どうして、教えてやったのにできないんだ？」
「時間を割いて、手間をかけやがって！」
「できないんだったら、勝手に食うんじゃねえよ！」
待ってました！とばかりに怒鳴って、説教して、ストレス解消します。
退屈な先輩にとって、これはお約束のイベントです。予定通りに怒ってるんです。
それがパワハラだとか、イジメだとか、当の本人はこれっぽっちも思いません。
「オレが指導してやった。うーん、いいことしたな」と、先輩は思っています。
こうして、たかがお菓子を食うにも、サラにはスンナリと食わせないのが刑務所。
雑居の懲役たちは「ルール」を押し付けて、守れないと怒鳴り、説教します。
怒られたサラは、謝罪し、ルールを教わるまで、
食べることができません。
こうやってメンドくさいことで引っ張って、
ギリギリまで食わせないんです。
ただ食わせないと、バレたら懲罰になってしまうので、
最後に食わせる。
もう寝る直前にあわてて食わせて、味わえない姿を見て、みんな満足します。
実は完全に
予定調和の「激怒⇒説教⇒謝罪」の流れなんです。
後半は、実際に特食のお菓子の時、サラが追い詰められる様子をご紹介します。
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2．サラが困っている姿が楽しい！
祝日は「特食が出る」ので、うれしくて、どうしても浮かれてしまいます。
でも「見習い扱い」のサラはここで浮かれると、とってもマズいんです。
待ってました、とばかりに「新入りイジメ」のワナにかかることになります。
（新：新入り・サラ 上：雑居の先輩）
新
「明日、特食出ますね。楽しみっすねぇ」
上
「ところで、オメェさ、特食の食べ方知っているのか？」
新
「あ、いやっ・・・大丈夫だと思います」
上
「だと思います、じゃねえんだよ！ちゃんと上に確認したのかよ！」
新
「すみませんでした。すぐ確認します」
上
「食べ方を訊くだけで良いのかよ？あとは大丈夫なのか？」
新
「は、はい。チリ紙を敷くとか、ハシを使って食うとか、確認しておきます」
上
「お菓子のゴミの出し方は知っているのかよ？」
新
「あっ、いや・・・」
上
「あっ！じゃねーよ。失礼なんだよ！知ってるのかどうか訊いているんだよ」
新
「すみません。わかりません」
上
「だったらやることあるだろ！さっさと上に確認しておけよ！」
こうしてさっそく怒られ、説教です。
実は先輩はゴキゲン。なぜなら予定通りの説教だったからです。
まさかゴミの出し方までルールがあるなど、サラが知ってるワケないですから！
このサラは、もう完全に「新入りイジメ」のワナにかかりました(笑)。
この後、サラは教育係の下っ端の先輩に教えてもらうことになります。
この先輩が粘着質なヤツだと、またここで説教が延々と続きます。
先
「オメェよ、どうしてサッサと訊いてこないんだよ？」
新
「すみませんでした・・・」
先
「オマエがちゃんと指導しろ、って自分が部屋長に怒られたじゃねえかよ！」
新
「すみませんでした・・・」
先
「コッチは時間割いてわざわざ教えてんだからよ、メンツ潰すんじゃねーよ！」
新
「すみませんでした・・・」
こんな下っ端の説教は、毎日小一時間は見られるので、全然珍しくないです。
実はこれでもまだ、全然マシな方なんです。前日の段階ですから・・・
もしサラが
当日になっても、特食の食べ方やゴミの出し方を確認していないと大変！
上で書いた説教が、２倍３倍くらいの怒りで延々と続きます。
「オメェ、あんなに時間があったのにどうして確認してないんだ！」
「当日に確認とか、あり得ないから！バカにしてんの？」
「食い方とかゴミの出し方とかわからねぇのに、食おうとしてるの？太いねぇ！」
「上から言われて気づくとか、気ぃ抜いてるねぇ。ココは刑務所なんだよ！」
「ヤル気ないんなら、ジャマだから部屋を出てけよ！」
こんな説教というよりは、罵倒、パワハラがマシンガンのように続きます。
確認していないサラ自身が悪いから、反論できず、泣きも入れられない。
怒っている先輩たちは正論なので、懲罰スレスレだが、自信満々で罵倒します。
特食のお菓子も出て、楽しい祝日のハズが、説教で、ノコノコと食えません。
そして、この後がメンドくさい。
反省する⇒謝罪する⇒指導をうける⇒先輩に確認する、をやらないといけない・・・
説教の後
「いかに自分がサボって確認を怠ったか」反省の弁をまとめて、謝罪し
下っ端の先輩に
「今さらですが、どうかやり方を教えてください」とお願いする
先輩に教えてもらったら、口頭で復唱、確認をして、ようやく実践となります。
まぁ、ノンビリしていたサラが悪いんですが、
時間がかかってメンドくさい。
さすがにこの間は、サラは特食を食べることができません。
怒られて、説教され、教えてもらう間に、ノコノコお菓子を食ったら・・・？
もちろん、先輩たちは全力で嫌がらせをして、コイツを工場から追い出すでしょう。
徹底的に精神的に追い詰め
「出役しません」「この工場出て行きます」と言わせる。
そうすれば、本人が懲罰を喰らうだけ。勝手にいなくなってくれます。
サラはこれが恐ろしいので、説教をされ、謝罪し、確認をします。
これが終わるころには、祝日の一日自体が終わりそうになります。
特食のお菓子は就寝前（21時）までに食べることになっています。
20時50分位になって、あわてて特食のお菓子を食べるハメになります。
「オメェがチンタラやってるから、こうなるんだよ！」怒鳴られながら、食べます。
せっかくのお菓子が、楽しむどころか、味すらロクにわかりません。
でも、これもすべて予定通り。
特食のお菓子を食わせないのはマズい。後でチンコロされたら、イジメで懲罰です。
だから、
ギリギリになって急いで食わせる・・・カンペキなシナリオ運びです。
これで
「サラにはお菓子をスンナリ食わせない」という目的達成です。
雑居の先輩たちは、文句を言いながらも、うれしそうなんです。
だって、サラがアタフタし、ギリギリまで食えず、味わえなかったんですから！
「ったく！どーして今ごろになって、あわてて食ってるんだよ！」
「ちゃんと前日までに確認しておけば、こうはならなかったんだよ！」
「部屋の雰囲気悪くするなよぉ！みんなで楽しく食おうぜ」
なんて先輩たちは言いますが、すべてが
計画通り、想定の範囲内。
これだから新入りイジメは楽しくて、最高の退屈しのぎなんですね。
サラが困り切っている姿は、ある意味特食のお菓子より、ごちそうなんです。
次回も、サラにスンナリと食わせない方法をお話しします。
今回よりはエグくはないですが、くだらない「いやがらせ」です。
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2015-09-18 17:00
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共通テーマ：日記・雑感
ここまですると、相手によっては道づれで引っ張られますよ…
初犯刑務所でも、ガラ受けいなくて満期上等な受刑者もいるわけでして…
経験談でした。
by 元炊場 (2015-09-18 17:58)
元炊場さん、はじめまして
コメントいただき、ありがとうございますm(__)m。
経験者からいただけるのは、なおさらうれしいです。
はい、ご指摘の通り、道連れで引っ張られることもありました。
ただ、工場の上の人たちと担当のオヤジがガッチリでして、オヤジは下っ端やイジメられっ子の言い分を、普段からロクに聞かなかったですね。
処遇に連行されても、なぜかおとがめなしで即日帰ってくることが、ほとんどでした。
ずっとイジメられていて、ガマンできずにブチ切れたヤツだけが懲罰を喰らうという理不尽なこともありました。
そのせいもあってか、おとなしいヤツらが集まっていたのか、「あきらめムード」が漂い、反抗する者がほとんどいないという工場でしたね。腹立つけどおとなしく従っておくしかないのか・・・という感じです。
上に書いたのは、少刑での話です。
さすがに成人刑だと、ここまでガッチリやってしまうと、「下剋上」のもめごとが起こりましたね。やっぱり少刑はスゲェなぁ(あきれる意味で）と思います。
文章にして見ると、経験者であれば「なんだかなぁ」とお思いになるかもしれません。とは言うものの、実話・体験談にてウソはついておりませんので、どうかお許しください。
まぁ、情けねー工場にいたんだの～コイツは、と笑ってやってください。
お読みいただきありがとうございました。
またコメントをいただければ幸いです。
今後ともお引き立てのほど、お願いいたします。
by きりたんぽ (2015-09-18 18:56)
さっそくのレスありがとうです。
自分も分類で某少刑（たぶんおなじ？）にいたのでよくわかります。
きなこには絶句したのは同感でしたw
オヤジによって待遇変わるのはあるあるですね。
ただ、飛ぶつもりのやつは夜勤の刑務官狙ったりしてましたねw
特役扱いの炊場でもいろいろありましたから、一般工場での生活をこなしてこられた事は敬意すら抱きます。
本当にお疲れ様でした。
また、続きを楽しみにしています。
by 元炊場 (2015-09-19 02:22)
元炊場さん、こんにちは
こちらこそ、コメントいただきありがとうございます。
正直、少刑は成人刑務所とはまったく別の世界でした。
2つを比較すると、今考えればオモシロい。
「成人だったら、絶対ケンカで懲罰だろ？」という理不尽なことが、懲役どうしでまかり通っていました(笑)。
あの世界はいくら説明しても、実際行かないとわからないでしょうね・・・
一般工場には一般工場なりの苦労がありますが、私にとって炊場は「一番大変なところ」という印象で、尊敬ですね。
あの世界を通ってくると、少しくらいのことではビビらなくなりましたが、無礼な振舞いをされるとすぐカッとなってしまうのが困ります(笑)。
いまだに店員や電車の中のオッサンに噛みついてしまうことが・・・反省です。
また色々と教えてください。
いつもお読みくださり、本当にありがとうございます。
by きりたんぽ (2015-09-19 10:57)
工エェ（´д｀）ェエ工＜きりたんぽさんってキレやすいの？
↑ 無礼なおやぢ
by V(-￥-)V ごとう さとき (2015-09-20 15:35)
ごとうさん、こんばんは
刑務所の殺伐とした環境は、性格や考え方まで変えてしまいます(笑)。
元々、カッとなったり、キレるなんてことはなかったのですが、どうも出所してからというものの、エラそうなジジイとかには反応しちゃうんですよね(;´Д｀)
それらを含めて、シャバへ適応するリハビリをしている最中です？(笑)
そんな急にキレたり、暴力を振るったり、ゼッタイにしませんからご安心くださいm(__)m。
いつもお読みくださり、本当にありがとうございます。
これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
by きりたんぽ (2015-09-21 01:21)