「刑務所の食事」について、続けてお話ししています。
不自由で単調な刑務所生活において、
マズくても食事は楽しみなモノです。
甘シャリ、めん類、パン食の日は、その話で懲役たちは盛り上がります。
何年もいれば、メニューは何周もして、その中身はわかっているのに、
期待する。
出てから、そして食べてから「こんなもんか」とガッカリするのに、
期待する。
そんなことを毎回毎回繰り返す。だから刑務所にも入っているんでしょうけど・・・
懲役たちはホント、おバカです。
その期待が一番高まり、テンションがMAXになる時・・・
それは、年末年始の食事
暮れと正月は、たしかに普段とは違ったメシになり、豪華にもなるんです。
と言っても、ムショめしですから、たかが知れてんですよ！
でも普段が粗末でマズいモノなので、飢えた懲役たちはハンパなく、
期待する。
去年の年末年始の食事の記憶が脳内で美化されて、やたら「豪華」になっちゃう。
そんな、
脳内と現実のギャップが激しい「年末年始の食事」についてご紹介します。
まず今回は、
「大みそかの食事風景」についてお話しします。
気持ちよく年越しを迎えられるか、ガッカリして「ふて寝」することになるのか？
前回は、「季節の行事のスペシャルメニュー」の一連のお話
「
刑務所の食事のウワサ⑦・・・ムショでクリスマスパーティー？」
にて、クリスマスのメニューについて詳しくご紹介しました。ぜひご覧ください。
1．ムショで年越しそばは食えるか？
刑務所では、年末年始は世間と同じく、12月29日から1月3日まで正月休みです。
作業がなくて、ラクでいいかと思ったら、
「ツラい」の一言でした。
ほぼ一週間、舎房と言う名のオリに閉じ込められっ放しですから・・・
正月休みの間に２回、フロに入る時だけ「オリ」から出られるチャンスです。
が、フロと言っても15分間ですし、外に出るワケではありません。
雑居なら、24時間ずっと一緒が一週間も続き、ホント息が詰まりそうになります。
そして、暖房などない環境ですから
「とにかく寒い」
じっと座って読書とか、寒すぎてカラダが持たないんです。集中できない・・・
せっかく一週間の休みがあっても、有効に使えないんです。持て余しちゃう。
オッサンらに囲まれ、ずっと閉じ込められ、寒さで読書すら楽しめない環境なんです。
となると、
残る楽しみは「年末年始の食事」と「年末年始の特食」だけです。
正月のメニューと特食のお菓子については、次回お話しします。
今回のお話は
「大みそかのスペシャルメニュー」に、ついてです。
正月は３度の食事のメニューもお祝いモードでグレードアップするんですが
残念ながら、
大みそかの食事のメニューは、通常と変わりません。
ところが、一つだけ希望があります。
それは
「年越しそば」が出るということなんです。
てっきり夕食が「年越しそば」になると予想し、夜中の空腹を心配していました。
が、刑務所にしては珍しく、良い方に予想が裏切られました。
夕食はいつも通り16時（まだ夜じゃねえって!）
だが、なんと別にソバが出るという！
17時に年越しそばを出すと言う。17時でも早いが、別に出すだけでもありがたい。
さらに、ウレシイことに
「カップそば」らしいというウワサなのです。
刑務所にいると、普段の食事が極端にうす味なので、
「濃い味付け」に飢えています。
レトルト、インスタント・・・シャバの味が大変貴重です。
だからカップラーメンなんて、ごちそうです。
「カップそば」が出ると聞いて、濃い汁を思い出し、テンション上がりまくりです。
「ウフっ。緑のたぬきかな？どん兵衛かな？」勝手に予想して盛り上がります。
みなさんも「カップそばが出る」と聞いたら、この２つがまず思い浮かびますよね？
そして、
カップそばなら定番は「天ぷらそば」だと思うんです。
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2．まさかの「キツネそば」
たしかに、懲役たちのウワサ
「カップそばが出る」は、ホントだったんです。
しかし、そこで浮かれていたことに落とし穴がありました。
出たのはまさかの「紺のキツネそば」
「ええっ？紺のキツネそばって、なんでそんなマイナーなモノを出すのよ！」
別に、ど定番の天ぷらそばでいいじゃないか！
値段も変わらないだろうから、安くしたいという意図でもない・・・
「ははん、これは偶然にキツネそばではなく、わざとやっているな」
「紺のキツネ」はシャバであれば、探すのにちょっと手間のかかるモノです。
わざわざそれを発注するところに、
刑務所の悪意を感じずにはいられません。
「官の配慮で、年越しそばは食わしてやる。だが満足させるワケにはいかん！」
そんなことを言い放つ、仕入れ担当の刑務官様の姿を、勝手に妄想します。
「年越しそばでも、一番グレードが低そうなヤツにしてやれ！」
勝手な思い込みでしょうが、天ぷらそばのほうが豪華に思えます。
キツネそばのほうが質素で、格落ちに思えてならないのです。
そんな考え？いやがらせ？で、紺のキツネそばという、変化球で来たと予想。
それでも一流メーカーのカップそばが食えるとわかって、得した気分です。
「まさか刑務所で、年越しそばが食えるなんて！」小さな幸せです。
16時夕食、17時年越しそば、という間隔のなさが不満ですが、どうせ空腹です。
刑務所でカップ麺をどう食べるのか、想像がつかなかったのですが、カンタン。
一つ一つの舎房に
「配食係」がカップにお湯を直接注いで回るんです。
炊場でお湯を沸かし、それを大きな「バッカン」と言われる容器で運ばれる。
各フロアで、バッカンからひしゃくやヤカンに移して、お湯を配布するワケです。
季節は冬、配られるまでに時間がかかり、お湯が冷めてしまうんです。
だから、せっかくのカップそばが食べごろにやわらかくならないんです。
芯の残ったカップそばにはガッカリですが、ホントおつゆが濃いこと！
「こんなに汁が濃くて、こんなにウマかったか？」激しく感動しました。
当然すべて飲み干し、口の中の残り香をいつまでも楽しんでいました。
3．そばが食えるだけマシだった？
「他の刑務所は、もっといい年越しそばが出るんじゃね？」
隣の芝生は青く見える、で勝手に良い方に想像していたら、大間違いでした。
実は「年越しそばが出るだけ、マシ」だったのです。
別の刑務所では、
まさかの「年越しうどん」だったのです。
それも懲役たちが喜ぶ「カップうどん」ではなく、
冷たいうどん玉一袋です。
それを炊場で作った
「具のほとんどない、うすーい汁」にブチ込んで食う。
ただでさえ冬で寒いのに、ただでさえ時間が経って汁が冷めているのに
そこに冷えたうどん玉（本来ならひと茹でするモノ）
をブチ込むんです。
ウマいワケがない。
温まるワケがない。
大みそかに震えてうどんを食うとは！
「お仕置き」はコレだけではなく、実はもう一つありました。
16時夕食、17時年越しそば、というスケジュールのつもりでいたら大間違い。
「年越しうどん」は、夕食の一品として出たんです。
つまり「オマケの一品」ではなく、通常のメニューの一つ。
お腹も満たされない！
冷たいうどんを食わされるわ、夜中に腹は減るわ、踏んだり蹴ったりです。
さすが、刑務所。キビシかった！
もうTVでも見て、気を紛らわせるしかありません。
一年のうち、大みそかだけ午後９時就寝ではなく、深夜０時過ぎまでTVが見られます。
この刑務所、なぜかTVのチャンネルは自由だった。
紅白歌合戦に興味がないので、
年末恒例「ガキ使スペシャル」を見ることにした。
そうしたら、その年の舞台は
「刑務所」だった！
「絶対に笑ってはいけない刑務所24時」をホンモノ刑務所で見るって、ブラックだな！
コッチは「笑ってはいけない」じゃなくて、
「笑えない」刑務所だっての！
次回は年末年始の特食、正月メニューをお話しします。
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2015-09-08 17:00
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共通テーマ：日記・雑感
紺のきつねそば、初めて知りました！
思わず調べましたよ笑
それにしてもマニアックなの出しますね～
ガキ使の刑務所バージョンて去年のあれですか？
これからもブログ楽しみにしてます♪
by まろん (2015-09-08 19:44)
こんばんわ。
自分は黒羽で３回、年末年始を過ごしました。
３回とも独居でしたので人間関係の煩わしさはありませんでしたが、
生まれて初めて一人っきりでの年越しは寂しいものでした。
年越し蕎麦は、一年目がパックの蕎麦と炊場で作ったつゆ。
２、３年目は「どん兵衛天ぷらそば」でした。
カップ麺のほうがおいしかったのは言うまでもありません（笑）。
ちなみに毎年、運動会後の夕食には「赤いきつね」が出てました。
娑婆の味はありがたかったです。
年末年始やGW、盆休みの連休は独居でも日中からテレビが見れました。
割と新しいDVDの映画が午前、午後に１本ずつ流されたので、退屈はしませんでした。
大晦日の夜は一年目が格闘技、２、３年目は紅白でした。
それを見ながら３日間我慢して貯めておいた特食の菓子をイッキに食べる。年末の醍醐味（笑）。
しかし何故か２１時になると、いつものように減灯されていました。
そして、「ゆく年くる年」を見て就寝。
by 1852番 (2015-09-08 21:40)
まろんさん、こんばんは
いつもコメントをいただき、ありがとうございますm(__)m。
いやぁ、正直紺のキツネそばは驚きました。どーしてフツーの緑のたぬきを出してくれないんだ！って、怒りの驚きですが(笑)。
紺のキツネもウマいんですけど、アブラと砂糖に飢えた懲役たちにとっては、天ぷらそばの天ぷらはとっても魅力的なんです。
わざわざマニアックな紺のキツネそばを出してくるのは、懲役たちのささやかな願いを読み取ったうえでの「いやがらせ」としか思えませんでした。
いつもブログをお読みくださり、本当にありがとうございます。
またコメントいただければ、幸いです。
今後ともお引き立てのほど、よろしくお願いいたします。
by きりたんぽ (2015-09-09 01:07)
1852番さん、こんばんは
いつもコメントをいただき、ありがとうございます。
また、貴重な「黒羽の様子」を教えていただき、勉強になります。
やはり同じ刑務所でも、施設間で食事の処遇にはかなりの違いがありますね。
運動会後の夕食が「赤いキツネ」ってオモシロいですね。
刑務所の中ではホント、カップ麺がメチャクチャうまかった！
まさに「シャバの味」というヤツで、あの濃いツユは中毒になります。ジャンクなモノ、安いモノでも、シャバの味というのは格別ですよね。
私は麦メシにウンザリしていたので、いまだにコメ食が好きになれず、昼食にはメンばかり食っています。
安いインスタントラーメンが一番ウマいという後遺症に悩まされています(笑)。
大晦日、21時で一旦減灯は同じですね。よく考えたら「減灯」というコトバもシャバの人たちは使わないでしょうねぇ(笑)。
こちらは毎年「紅白」で、へそ曲がりの自分は消して、マンガを読んでいました。
シャバではあまりマンガを読みませんでしたが、刑務所に行ってからやたら読むようになりました。「食の軍師」「孤独のグルメ」「めしバナ刑事タチバナ」「深夜食堂」あたりのメシネタのマンガを見て、気を紛らわせていました。
刑務所で「ゆく年くる年」を見ると、正月から気分が落ちます(笑)。
いつもコメントをいただき、ありがとうございます。
また色々と教えてください。本当にありがたいです。
今後ともお引き立てのほど、よろしくお願いいたします。
by きりたんぽ (2015-09-09 01:26)
本当に文才のある方で、この才能をこれから、ご自身、生かしていただければ、と思いました。
紺のきつねの件は何度読んでも面白く、楽しませていただきました。
東洋水産ではないけれど、昔、食品メーカーにつとめたことがあり、その事情を推し量るに。
紺のきつねのような、あまり人気のない品物は在庫管理に十分気をつけ、生産すると思うのですが、大量キャンセルで、滞留在庫となり、問屋さんを通じて、破格なサービス品として、供された可能性があったのではないかと思います。
仕入れ担当者の多少の意地悪もあるかもしれませんが、そんな背景もあったのかもしれないことをお知らせしておきます。
これからも本ブログ楽しみにしておりますので、お体にきをつけて、お書き込みくださいませ。
by しろし (2016-04-25 18:17)
しろしさん、はじめまして。
コメントをくださり、ありがとうございます。
お褒めのコトバまで頂戴し、恐縮です。
在庫にまつわる貴重なウラ話、オモシロいです！
そーなんですね…
お役所の一つ、「事なかれ体質」の刑務所が、予算を考えて破格の「紺のキツネ」を仕入れるという細やかなことを考えてやっているとは思えませんが(笑)、そうだとしたら会計課の刑務官様を見直さなければなりません。
でも、やはり、キツネそばではなく、天ぷらそばが食べたかったです(笑)。
こちらこそ今後ともお引き立てのほど、よろしくお願いいたします。
またコメントをお待ちしています。
by きりたんぽ (2016-04-25 18:35)