刑務所の「細かすぎる」食事マナー(12)・・・イジメられっ子に転落するまで

しばらくの間「刑務所の食事」について、ご紹介しています。

食事のメニューとか、変わっている点とか、お話ししてきましたが

他では話されない「細かすぎる食事のマナー」について、力を入れて書いています。


これって、刑務所特有の「理不尽」や「イジメ」そのものでもあります。

だから、外から聞いている分には「笑える」と思うので、いくつも紹介しています。

実際、こんなくだらない「食事のマナー」を守らされる方は、ブチ切れ寸前ですが・・・


前回お話しした「音の潔癖症」のヤツらが、食事中に要求してくる理不尽の数々は

「刑務所の「細かすぎる」食事マナー⑪・・・音の潔癖症という困ったヤツ」

にて、ぜひご覧ください。「ムショのイジメ」の初歩がよくわかります。


今回も「食事のマナー」に名を借りた、「イジメの初歩」をご紹介します。

食事で出る「パック」についてお話ししたいと思います。

開け方、たたみ方、いちいちうるさいんですよ・・・


1．パックの開け方がわかりません
刑務所の食事は、炊場工場という調理場で、懲役たちがほとんどを作っています。

それでも、「パック」されたシャバの食品は、毎日何かしら出ます。

しょうゆの小袋から、牛乳パック、納豆パック、レトルトのパック、真空パックの魚


このような感じで、毎食とは言わなくても、一日に１～２回はパックの世話になります。

パックの食品は「シャバの味」にて、刑務所ではありがたーい一品です。

とくにレトルト物はレベルが高く、懲役たちにとって、楽しみなごちそうです。


ところが、このウマくて、楽しみな「パックもの」ですが、大きな問題があります。

それは「キレイに開けるのがムズカシイこと」です。

キチンとパックを開けないと、またメンドくさいことになるんです。


言っていること、わかります？

雑居房はパックの開け方ひとつまで「オキテ」があるんです。

まず、シャバのパックと、刑務所のパックの違いを説明しなければなりません。


今どきのシャバのパックですと「こちら側のどこからでも開けられます」と表示され

たしかに、スッとラクに切れて、開けることができます。

失敗することはないし、力を入れる必要もありません。


ところが、刑務所で出てくるパックの多くが、このシャバのタイプではない！

昔ながら、昭和の頃の「切れ目が入っていて、その一点から切って開ける」タイプ

つまり、一発勝負で、力も入り、結構失敗する、という厄介なヤツなんです。


「パックを開ける時のマナー」というのがありまして

①手を使って開けること

②最後まで完全に開けること


ホント、「切れ目タイプ」のパックは切れない、開かないことが多くて困ります。

①はもし手で開かなかったとしても、ゼッタイに歯で開けてはダメ。

②はパックを開けたら、片割れのひも状を完全にパックから切り離さないとダメ。


みなさんも、この手のパックを手で開ける際に、一度は失敗したことありますよね？

「力を入れても切れない」「途中でブチっと切れた」・・・最悪です。

でもシャバなら、ハサミを使ったり、歯で開けたり、他のワザが使えます。


しかし、ココは刑務所。ハサミはナシ、歯で開けるのは禁じ手です。

わざわざ「ハシ」を使って、穴を開け、パックを開けるというメンドくささ。

雑居では基本的にスプーンでメシを食うので、ハシはこういう時しか活躍しません。


なぜパックを開けるのに「歯」を使っちゃあ、いけないか？

パックをゴミとして集めるとき、部屋の懲役たちの手から手に渡ります。

「歯でパックを切ったら、パックが汚い！触る人の気持ちを考えろ！」と言う。

それが「気づかい」だと言うのです。

まぁ、メンドくさいけど、正論だから反論はできず、従うしかないのです。


どうして、たかがパックにそんなにピリピリするのか？

ちゃんと開けられないと、「イジメられっ子」に転落するからです。

また、もし開けられなかった時、対応を間違えると、即「イジメられっ子」です。


どうして、パックが「イジメ」にまで、つながるんでしょ？

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2．パックでイジメられっ子に？
パックを開けるのを失敗したからといって、すぐにハシを使ってはいけない。

そんなあなたは、刑務所では１週間でイジメられっ子です。

もし、失敗したら・・・まず、まさかの「部屋長に報告」です。


「◯△さん、お食事中すみません。今よろしいでしょうか？」

「パックを開けるのを失敗いたしまして、ハシで開けてよろしいでしょうか？」

失敗したら、報告して、許可を取らなきゃいけないというメンドくささ！


許可をもらったからと言って、気を抜いてはいけません。

ハシを棚から取ろうと立ち上がるワケですが、必ずこのセリフを言わなければダメ。

「食事中、立ち、失礼します」

そして、ハシを取って、また座る時にも、必ずこのセリフを言わなければダメ。

「食事中、立ち、失礼しました」

みんながメシを食う最中に、立ち上がるのだから「ことわり」を入れる・・・

これが当然の「気づかい」だと言う。


この一連のセリフを忘れたり、間違えたりしたら、大変です。

「オメェよ、モタっといて（もたつくの意）テキトーなことやってんじゃねぇよ！」

と、先輩たちから怒鳴られます。こういう失敗がイジメられっ子への第一歩です。


たかが「パックを開ける」ことをフツーにできることが、刑務所では大事なんです。

こういうことを何度も失敗していると「アイツはダメなやつだ」と、見下されます。

一度イメージが決まると、抜け出せないのは小中学校と同じ。スクールカーストです。


「コイツ、見ているだけでイライラする」と、ジャマ者扱いされ

「みんなと同じように、ちゃんとやれよ！」と、常にアタリがキビシクなる

シャバなら「パワハラ」のイジメです


昨日までは調子よく、みんなと話していたのに、この手のワナに引っ掛かり

きちんと対応や謝罪をせず、放ったらかしにしてしまい、何人もの懲役が

「イジメられっ子」に転落していったか！


「そんなちっちゃいこと、許してやれよ！」と、おっしゃることでしょう。

刑務所では、誰か一人を標的にしてイジメていると、そいつにだけ攻撃が集中し

イジメに乗っかっていれば、他の者は自分が標的にならずに済むという・・・


まぁ、人間いくつになっても、小中学校の頃とやっていることは変わりません。

イジメると、ついでにストレスも発散され、気分は良くなるし

かえってその雑居房は一致団結、うまくまとまるという、矛盾です・・・


ただ、刑務所の中に入っていると、まったく「イジメ」の認識はないんですよね。

むしろ「それが当然」と信じて、率先してやり、後輩に強要していました。

あくまでも「刑務所での食事マナー」を守っているだけ・・・


「雑居で生活している以上、周りに『気づかい』ができなくて、どうする？」

「みんなやっているんだ！できないなら、オマエがここから出て行け！」

すぐこう言って、説教です。タチが悪いね・・・


実は「パック」から「イジメ」へのお話、もう少しあります。

もし中身をこぼしたら、どうすればいいのか？ これがまた、メンドくさい(笑)。

また対応を間違えると、「イジメられっ子」に転落です。



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タグ：食事 マナー イジメ

コメント 3

いつも大変勉強させて頂いてます。
雑居の食事の独特のルール、怖いですね涙
気の弱い人なら精神病んでしまいそうですね(>_<)
知り合いが拘置所にいると以前お話しましたが、その方は拘置所までは何度か経験されてるみたいで、雑居に居られるのはよっぽど大人しい人間かお山の大将かだと言っていました。
その方は喧嘩っ早いようで直ぐ懲罰だと(^-^;

何がお聞きしたいかと言いますと、雑居で先輩のルールしきたりに賛同できない気の短い人間はどうなってしまうのかな？と

問題おこして懲罰、色んな工場？をたらい回しな感じでしょうか？
要注意人物として独居行きですか？
by まろん (2015-08-30 19:00) 

まろんさん、こんばんは。

いつもコメントをいただき、ありがとうございます。m(__)m

この話はもちろん本当ですが、むしろ話を抑え気味に紹介しています。実際は、周りの先輩たちからもっと罵声が浴びせられます（笑）。
ホント、食事の時間は気を抜けないですよ。

まろんさんのおっしゃる通り、気の弱いヤツは病んでしまいます。いい大人が、担当の刑務官様に「もう耐えられないです。あの部屋はムリです！」と泣きながら、別の舎房に移してもらえるよう訴えるなんて、何度も見ました。泣くんですよ・・・

雑居でルール・しきたりが守れない人間は、まず雑居で冷遇（イジメ）され、次に工場で冷遇され、村八分状態に追い込まれ、自分から「作業拒否」をさせ、工場を追い出すというのが、お約束のパターンです。
周りと仲良くできない人間は、担当の刑務官様にも大抵嫌われるので、何かあったらすぐ連行⇒調査⇒懲罰にされてしまうのです。刑務官様を含め、メンドウなヤツには皆冷たいです。

そして刑務所では気の短い人間は、損ばかりするようにできています。本来であれば懲罰までにはならないことでも、連行されてしまったりします。懲罰も４回５回となると、仮釈放の対象ではなくなってしまいます。優遇区分もずっと一番下のままで、集会のお菓子は食えません。懲罰のたびに工場が変わり、一番下っ端からやり直し、いつまでもロクな作業をやらせてもらえません。
メンドウだから、と刑務官様が最初から独居房にブチ込むこともありますが、別の雑居に転房させることも多いです。ジジイばかりの雑居に入れて、自分がジジイの面倒を見ないとどうにもならないように仕向けたりもします。

というワケで、気が短いと良いことは何一つありません。
ただひたすらガマン、周りと協調してやっていくしかないです。
ナメられない程度におとなしくやっていくのが、無難なんでしょうね。

これで答えになったでしょうか？
わからなかったら、改めて質問にお答えします。
いつもブログをお読みいただき、本当にありがとうございます。
またコメントをいただければ幸いです。
これからもお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。
by きりたんぽ (2015-08-31 01:52) 

きりたんぽさん、とても解りやすい丁寧なお返事有り難うございます。
大の男が泣いてしまうとは余程な環境なんですね涙
協調性はどこの世界でも必要なんでしょうね、刑務官にまで嫌われてしまったら刑務所では死活問題ですもんね？

その方は今回は懲役確定なので覚悟の上、現在居る拘置所では独居でゆっくり？しているのかもしれまん。
頭の悪い方ではないので生活しやすいよう上手にやっていくとは思いますがそこは刑務所、海千山千の猛者達の集まり、侮れませんね(>_<)

こちらこそ、これからも宜しくお願い致します。
by まろん (2015-08-31 10:27)