刑務所の夏⑥・・・舎房で「打ち水」をして涼しくなる！？

「刑務所の夏って、ホントに暑いんですよ！」というのをわかって欲しくて

数回にわたって、「刑務所での夏の過ごし方」について、お話ししています。

今回は「舎房そのものを涼しくする」ムチャな夏のしのぎ方をご紹介します。


前回、前々回は、懲罰上等、とにかく涼しくなればよいという裏ワザを紹介しました。

「刑務所の夏④・・・懲罰覚悟！懲役たちの「夏のしのぎ方」」
「刑務所の夏⑤・・・「脱毛」で夏を涼しく乗り切る？懲役たち」

にて、くだらないことをアレコレやらかしていますので、ぜひご覧ください。


12．日本の伝統「打ち水」で涼しく
「刑務所の暑い夏を、少しでも涼しく過ごしたい」

これは願望ではなく、夏バテでやられてしまうという「死活問題」なのです。

とくに８月は「夏季休暇」という、お盆の時期に３日ほど休みが与えられます。


つまり、舎房で過ごす時間が長くなるのですが、これがちっとも嬉しくない。

一番クソ暑い時期に、クソ暑い舎房で引きこもり生活など、「拷問」です。

舎房からは一歩も外へ出られず、ただじっとして暑さに耐えないといけない。


なんとか、少しでも涼しく過ごす方法はないか？と殺風景な舎房を見回しますが

涼しくする武器は、うちわと蛇口の水だけ・・・


シャツをビショ濡れにさせたり、頭から水をかぶったり、自分を冷やす方法は試した。

が、しかし、舎房があまりにも暑すぎるから、これらは気休めなんですよ。

なんとかこのクソ暑い元である「舎房」を冷やすことはできないだろうか？


冷房もない、風通しも悪い、カーテンもない・・・

鉄格子の小さな窓に、古くて土色になったタタミ、コンクリむき出しのカベ・・・

おっ？コンクリートのカベは、寄りかかればヒンヤリするんじゃあ？と思いました。


ところが、甘かった。８月はもう温まっているのです。

これが７月上旬くらいまでなら、まだヒンヤリ感があるのですがねぇ・・・

すでに熱を蓄えてしまい、コンクリのカベでさえ温かいんです。


それでもあきらめきれず、ヒンヤリしないかなぁと、寄りかかってみるのですが

「オイッ！おめぇカベに寄りかかるんじゃねぇ！」

と、刑務官様に見つかってしまい、怒鳴られます。


刑務所は舎房のカベすら寄りかかってはいけないのです。

ダメな理由は「だらしないから」ではなく、「カベが汚れるから」だそうです。

というワケで、カベは冷たくもないし、寄りかかるのもダメで怒られる。


もう、残りの手段は舎房の中に、水をまくしかないか？

日本古来からの涼み方、それは「打ち水」

タタミの上、コンクリのカベに水をブチまいたら、結構涼しくなるんじゃあ？


何度ホントにやってやろうかと、思ったことでしょうか？

さすがにこれをやってしまうと、すぐバレるし、重い懲罰になりそうだし・・・

でも、せっかくの「打ち水」という涼しくなりそうなアイディアを試したい！


そう考えて、悶々としていたら、窓の外に「バルコニー」がありました。

刑務所により舎房の造りは違いますが、私のいた刑務所はバルコニーがありました。

バルコニーと言っても、二重窓があり、完全に配管のためのスペースです。


このスペースは、コンクリがむき出しで、一人位が通れるようになっています。

懲役たちは、頑丈な金網でできた網戸越しに見られるだけで、決して行けません。

「ん？ここに打ち水したら、少しは涼しくなるんじゃね？」


さも、私が思いついたように話していますが、懲役なら誰でも思いつきます(笑)。

「部屋の中ではないし、水をブチまいてもバレない。試す価値アリだな」

そうやって、懲役たちは同じ考えをして、バルコニーに「打ち水」をします。


意を決して、洗面器に水をため、網戸越しに水をブチまく用意をしました。

ところが、このやり方では「懲役のシロウト」であり、ダメなんです。

どうして？じゃあ、どうやって「打ち水」するのよ？


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ここで、洗面器に水をくんで、水をブチまくのは「懲役のシロウト」です。

なんせ、この網戸は決して開かないので、網戸越しに水をブチまくしかない・・・

しかし洗面器で水をまくと、網戸で半分くらい跳ね返ってしまい、床が水びたしに！


「あぁ～ビショビショじゃねーか！」

と、涼しくなるつもりが、まさかの失態に頭に血がのぼり

逆にカッカして、余計に暑くなるという、最悪の結果に。


そこで懲役慣れしてくると、洗面器では打ち水をしないのです。

では、どんな方法で「打ち水」をするのか？

これが、ホント懲役ってくだらねぇんです。


シャンプーの空き容器をとっておいて、それを使うんです。

シャンプーの空き容器に水を入れ、それを網戸越しにブチまくのです。

水鉄砲みたいで楽しいし、ピューッと広範囲に飛ばせるので、打ち水しまくりです。


刑務官様が覗いてくる方向に背中を向け、手元にシャンプーの容器を持てば

まずバレることはありません。

そもそも打ち水しているなんて想像つかない(笑)


もちろん、これって反則行為、バレたら懲罰です。

でも、それ以上にこんな子供じみたことを、真剣にやるのが懲役なんです。

つくづく懲役ってアホだな、人間追い込まれれば何でもやるな、と思います。


毎年夏になると、必ずこの「打ち水」をやっていたのですが、どうも疑問が・・・

水をまいてもまいても、涼しくなった気がしないのです。

実は調べたところ、条件によっては意味がないどころか、ダメらしい！！


なんと、直射日光が出ている状況で「打ち水」しても、逆効果らしいです。

温められた水が蒸発して、湿度が高くなり、体感の暑さは余計に上昇。

な、なんということだ。打ち水するなら、早朝や夕方にすべきなのです。


ということではない、ですよね・・・

そもそも、反則行為の「打ち水」なんかするんじゃねぇ、とお叱りを受けますね。

しかし、上には上がいるんですよ！


次回、打ち水を超える発想をご紹介します。もう、涼しくないかも？

ちなみに私は、涼しくなるのではと思い、くつ下を濡らしてはいていました。

ところが、気持ち悪いだけではなく、刑務所でうつされた水虫が悪化しました。

涼しくもなく、最悪です。



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タグ：夏 暑さ対策

コメント 2

こんばんは。

夏の暑さ、本当にキツかったですね。
特に入浴のあと、B番(黒羽では一番早い入浴で14時半には入ってました)だと風呂を出た頃が一番気温が高い時間帯で
うちわだけではなかなか汗が引かず、結局はまた汗をかいて気持ちの悪い思いをしたものです。

前回コメントしましたが、それでも黒羽の夏は他の刑務所よりはまだよかったと思います。

夏期処遇では運動時間に水シャワーを浴びることが出来たのですが、工場に戻れば結局また汗だくになるので、自分は浴びませんでした。
by 1852番 (2015-08-16 20:07) 

1852番さん、こんばんは。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。m(__)m
メッセージありがとうございます。

夏場の早い時間帯の入浴は最悪でしたね。
汗びっしょりでクサい下着を再び着なければならず、とても不快でした。その上、工場に戻って1時間ちょっとまた作業をするというのが、キツかったです。
夏季処遇の増し入浴があっても、月、水、木が入浴日だと、週末は金・土・日とフロに入れないので、これがまたキツかったです。

夏季処遇で、運動時間後の水シャワーはありましたが、自分もほとんどやりませんでした。水シャワーは2分と忙しい上に、結局また汗だくになるんですよね。

エアコンのありがたさを心の底から感じています(笑)。

貴重な経験談を分かち合っていただき、感謝です。
またコメントをいただければ幸いです。楽しみにしております。
by きりたんぽ (2015-08-16 23:53)