出所した有名人に、刑務所の食事をテキトーに紹介されるのは許せん！
そんな気持ちから、
「刑務所の食事」についてシリーズでお話ししております。
前回は、刑務所と言えば「麦メシ」であり、麦メシについて詳しくご紹介し、
刑務所で最も有名な都市伝説「ムショのメシはクサい」について検証しました。
「
刑務所の食事④・・・「ムショのメシはクサい」は本当か？」
にて、お話ししましたので、ぜひお読みください。
乱暴に言えば、
「麦メシはウマくない」「クサいメシにはワケがある」でしたが
ウンザリさせられたのは「麦メシ」の話でして、
実は「パン」食もあるんです。
パンは懲役たちには大人気。
今回は主食でも「パン食」について、ご紹介します。
5．そんなにパンがうれしいか？
パンは、懲役たちにとって、「麦メシ」という退屈な日常から離れられる
一時の非日常、安らぎなんです。
大げさな言い方ですが、麦メシよりは
ずっと「シャバに近い食べ物」でした。
府中刑務所のように自所でパンを焼いているところなら別ですが、
フツーの刑務所では、
パンは外注になるため、どうしてもコスト高となります。
そういうワケで、
パンは、刑務所によって月◯回と回数が決まっています。
私の知る限りでは、
月６回と決められていました。
出るのは、基本的にコッペパンのみ
パサついて、香りも乏しく、粗末です
が、しかし
懲役たちの間では絶大な人気
パン食の日は、朝から「今日はパン食だね。楽しみ！」と、盛り上がります。
四十を過ぎたオッサンらが、目を輝かせて話す姿は
「キモい」の一言です。
「たかがパンでそんなに嬉しいか？」
恥ずかしいですが、毎日麦飯にウンザリしているので、ウレシイ出来事でしたね。
いい歳してみっともない、と思いながらも、朝からちょっとテンション高いですもん。
私が経験した刑務所では、コッペパン型しか出たことがありませんが、
「ブドウパン」「チーズパン」とトッピング系のコッペパンは月１回出ました。
間違っても「クロワッサン」とか「バゲット」は出ません。
ただ、どこの世界にも変わったヤツはいるもので、
「パンは好きだから食べたいが、
このパサパサがガマンならん！」
と
怒って、いつもパンを残していました。
そのパンの
残し方が斬新なんです。
パサパサが耐えられないので、
コッペパンの外周はすべて残すのです。
つまり、
中をくりぬくようにキレイに食べ、食パンで言う耳の部分だけ残すんです。
ヤツはまず、パンを真っ二つに折り、それぞれ中身だけをくりぬき、食べる。
だから、外周だけ残っているので、
一見まだ食べていないように見えるんです。
「オイ！おまえ食べないんだったら、くれよ！」と何度も言われていました(笑)。
そんな特殊な人の例は別として、
パン食の日はほぼ残飯がナシ。
それくらい、人気があり、気合を入れて食べていました。
パン自体が人気ですが、もう一つ別の原因もあるんです。
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パン自体も人気なんでしょうが、
人気の決定的な要因は「甘さ」だと思います。
パンと一緒に、
ジャムやチョコクリーム、ピーナッツクリームの小袋が出たり
小倉あんやぜんざい、サツマイモやうずら豆の甘煮が出ることが多いからです。
このような
「甘味」や「甘シャリ」と言われるモノは、
パン食の日に出るので
よりパンが人気が高いのだと思います。
この
「甘味」や「甘シャリ」をパンにはさんで食べるのが至福の瞬間です。
「たかが、甘味でバカバカしい。大げさだ！」
と、思うでしょう？ 私も辛党ですし、懲役なりたての頃はそう思いました。
ところが、人間飢えてくると、甘味が貴重で、たまらなく欲しくなるんですよ。
決められたマズい食事しかなく、それも腹一杯食べられるわけではないので
懲役たちは常に飢えています。
普段食えないからか、本能がそうさせるのか、仕組みはよくわからんのですが
甘味に対する渇望、執念といったらハンパじゃないです。
（甘味に対する執念深い話、めぐってのトラブルの話は後日詳しくします）
そんな憧れのパンが、
「A食」や「特」だと、デカいのが来るわけです。
（前回話しましたが、Ａ食は立ち作業の者、特は身長180cm 以上の者の食事です）
「特A」のパンは「B」のパンと比べると1.5倍近くはあります。
B食を食べている懲役たちの前で、デカいパンを食べた時の視線といったら・・・
パンを見る嫉妬の目がハンパない！
「チッ！いいよなぁ、デカいパンが食えて」と露骨に文句を垂れる者もいます。
繰り返し言っておきますが、
パンはお世辞にもウマいとは言えない代物です。
シャバのパンのように甘みも、香りもなく、パサついています。
「フワフワ」とか、「モチモチ」とか、「サクサク」とかホメ言葉とは無縁です。
また、
パンの日が週末だと、平日焼かれたパンが支給されるので、
パサパサです。
正直、水分で流し込まないと飲み込めないような時もしょっちゅうでした。
シャバに出て冷静に考えると、うちのイヌも食わないか？小鳥のエサか？のレベルです。
そんなパンで、嫉妬したり、揉めたりするなんて、貧すれば鈍するではありませんが
いかに人間が欲・煩悩にまみれた存在かと思い知らされます。
そして
飢えるというのは恐ろしい。こりゃあ、戦争にもなるわ！と思いました。
なんて、カッコつけたこと言っていますが、
私自身、
常に空腹で、常にメシのことを考え、少しでも多く食わせろと恨んでました。
実際、B食の時、A食のパンを食べているヤツを憎んでさえいましたから（笑）。
中には、あまりにパンが愛おしくて、
「お取り置き」しているヤツもいました。
刑務所の夕食は17時。次の朝食は7時なので、14時間もあり腹が減ってしまいます。
そこで考えたのは、
「取っておいて、後で食べる」という作戦。
ちなみに、これは
立派な反則行為で、見つかったら即、連行、懲罰です。
パンの「お取り置き」のプロ、Mくんに訊いてみたところ
「一度に食べるのがもったいない」と言うのです。
「夕食でパンが出たら、半分取っておくんだよ」
―――えっ？いつ食べるの？
「寝る前に食べるんだよ。そうしたら二度楽しめるでしょ」
―――でもさぁ、食べているところ、刑務官に見つかっちゃうでしょ？
「あはは、フトン敷いてさ、ちょっともぐって、背中向ければ大丈夫」
―――えぇっ！フトンの中でパンを食べるの？
「そうだよ～だって急いで食べたらウマくないじゃん。味わってさあ」
―――フトンの中で食べて味わえるのか？見つかったらヤバいでしょ？
「うーん、そのドキドキしながら食べるのが、またウマいんだよ」
―――はいはい、なるほどね、そーですかい。
一度だけMくんが寝る前にコッソリとパンを食べるところを目撃しましたが
数時間も空気にさらされてパサパサで
どう見ても、マズそう
Mくんは背中を向け、食べていましたが、やはりパサパサには勝てず
むせたようで、背中を小刻みに震わせていました。
次回は「ムショめしの謎」食べているのにやせる？お話をします。
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2015-07-29 17:00
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共通テーマ：日記・雑感
コッペパン型がよくでると仰せになりましたが、揚げパンは出るのでしょうか？
油が高いからさすがにそこまではいかないですかね
by クライヴ (2016-04-18 06:29)
クライヴさん、こんにちは)^o^(
コメントをくださりありがとうございます。
揚げパンが出たら良かったですね〜
残念ながらコッペパンしか出ませんでした。
ただ、月１回はブドウパン(もちろんコッペパンです)が出るくらいですね。
刑務所なので贅沢言うつもりはありません。
が、刑務所のパン食はお腹が早く空くし、食い足りない感じがするので、その点がツラいです。
シャバのパンがあまりにウマイので、出所後はしばらくパンにハマりました。
またコメントをお待ちしております。
いつもお読みくださり、感謝です。
by きりたんぽ (2016-04-18 17:01)
刑務所の真実、暴露していただいて感謝します。
私は幸い今のところ刑務所に入る行いはせずに済んでいますが、以前「刑務所の中」という映画を見て「おっ？結構ウマそう！」なんて思ったりしていました。これは本心なんです。しかしおそらくそれは、「自由に食いたいものが食える」という前提の下で、追加で食えるとすれば「ウマそう」なのだと思います。私ときたらコッペパンが大好きで、昼食用に弁当ではなくわざわざ買ってまでコッペパンを持っていくくらいですから。でもきっとそれは、夜にカップ麺や牛丼を好きなだけ食えるからなんですね。
そういう意味では、制限された体重の落ちる嫌でも痩せられる食事、というのは、普通の生活をしている上でこそ、うらやましく思ってしまう面もあるのです。
自由に何でも買えてしまう反面、誘惑に勝てず思わずポテチやファミチキを買ってしまいますから。そんな私のお腹はパンツの縁に乗っかってしまっています。
by crow (2016-08-23 23:37)
映画「刑務所の中」は食事のシーンがウマそうで、そして笑えますよね～
但、アレと同じことを実際の雑居でやったら、行儀が悪いとメチャクチャ怒られますよ(笑)
パンは人気でしたが、明らかに量が足りなくて、腹が減ってしまうのが困りました。
by きりたんぽ (2016-08-25 09:16)