このところ、刑務所での手紙の話をさせていただいております。
家族からの手紙が来れば、ホッと癒され、
女性から手紙が来れば、テンション上がり狂喜乱舞、
上司から手紙が来れば、温かいコトバに涙する
・・・てなコトがいつも続けば、嬉しいんですが、
現実はキビシイんです！
そんなドラマのようには、世の中うまくいくかよ！
と、懲役たちはツッコむに違いないです。
前回まで、そんな中からいくつか選んで、お話ししました。
実は訴えられた裁判資料の手紙だった、ガラ受けを拒否された、親から勘当された・・・
今回はそこまでの
「不幸の手紙」ではないものの、
明日は我が身、自分にも十分ありうる「小不幸の手紙」をご紹介します。
現実味があるだけに、こちらの方が恐ろしいんじゃないか、と思います。
F.なんで、このタイミングでよ！
1．とにかく離婚してください
刑務所に送られる手紙は、本人の手元に届く前に、まとめて検閲されます。
通常は、各工場に届けられ、夕方、担当の刑務官様から手渡しされます。
ところが、担当の刑務官様によっては、渡す前にコッソリ読むんですね。
「おめぇ、親御さんの具合悪いみてぇだが、大丈夫か？」
なんて、話しかけてきたりするのです。
そうやって、良くも悪くも受刑者たちの状況が把握されるワケです。
もし何か手紙の中で、
本人にとってショックな出来事があれば、本人に手渡す前に
刑務官様が呼び出して、話をして、落ち着かせてから手紙を渡します。
ということは、
手紙を持って呼び出されるというのは悪い出来事の証拠・・・？
そんな予備知識を頭に入れてから、Tさんのエピソードをお聞きください。
ある日突然、一通の手紙によって絶好調からどん底に叩き落とされます。
Tさんは30代で肉体自慢な、奥さんと二人の子どもがいる、パパ。
シャブ（覚せい剤所持）にて懲役１年半を喰らって刑務所に来ました。
Tさんの自慢は、カワイイ奥さんと帰りを待つ幼い子どもたちです。
奥さんは遠いところを子どもを連れて、
月２回面会に来てくれます。
第２第４木曜日の午前に決まって来る面会が、Tさん、楽しみでしょうがない。
前日からソワソワしていて、当日は興奮冷めず、奥さんの自慢話を聞かされます。
人間、心の拠り所があると、刑務所にブチ込まれていようが強いものです。
Tさんは運動時間は筋トレに余念がなく、出所後すぐに働けるよう鍛えています。
「カミさんは、できたヤツでさぁ」が口グセで、聴かされる方はウンザリですが・・・
刑務所にブチ込まれていながら、こうして心身共に絶好調なTさんでしたが、
刑務所という所は、そんな幸せそうなヤツを許してはくれないようでして・・・
ある日の夕方、そろそろ作業も終わりという頃、担当の刑務官様が呼び出します。
「おいっ645番、T！担当台まで」
片手には手紙を持っているのがチラッと見えました。
（チラ見は懲役の悪いクセです）
手紙を持って呼び出される、つまり
悪い出来事の証拠なので、
Tさん、何かピンチということか？
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「おいっ645番、T！担当台まで」
普段は担当台のある高い位置から、見下ろすように刑務官様は話しますが・・・
わざわざ降りてきて、Tさんとコソコソと話し始めました。
手紙も持っているし、近い距離でコソコソ話すし、やっぱりなんだかオカシイ。
5分、10分、話は終わりません。気になって、私もチラチラ見て、窺っていました。
これは懲役たちの悪いクセで、すぐチラ見をして知りたがります。
「そんなはずないっすよ！」
Tさんが、突然大声で叫びました。
刑
「いやいや、おめぇの気持ちもわかるが、こればっかしはどうにもならねぇ」
T
「面会で直に話してから決めますよ！」
刑
「それはおめぇの勝手だが、相手の気持ちもあることだから、考えてやれよ」
T
「そんなこと言われても、納得いかないっすよ！」
刑
「オレはお前に事実を伝えるしかできねぇ。でもこれでヤケになっちゃダメだ」
T
「ありえないっすよ！この前も面会に来たばっかりっすよ！」
何が起こったかはわからないが、ただごとでないことはわかります。
フツーであれば、Tさんのように刑務官様に言い返したら、大変です。
「おめぇ、懲役の分際でオレに逆らうってぇのか！」
と、
一喝され、ヘタすれば即、連行→懲罰行きです。
それなのに、刑務官様は怒るどころか、Tさんをなだめています。
翌日、人づてにTさんに何があったか聞いてみると・・・
「奥さんから手紙が来て、離婚して欲しい、と言ってきた」
「奥さんは短い手紙に、離婚届を同封してきた」
「それを書いて、早急に送り返して欲しい」
な、なんと、面会にも来ていた奥さんが、
手紙で離婚宣告だったのです。
そりゃ、Tさん、あまりの驚きで取り乱しても仕方ないわ・・・
よく聞いてみると、弱音を吐いているのではなく、本気の覚悟らしい。
「もう限界です。会うつもりもない」
「連絡をしないでください」
「離婚しか考えていない」
と、離婚の執行猶予の余地がない様子らしい・・・
つい先週まで、子どもを連れて面会に来てくれていた奥さんが、何かがキレて
手紙による「突然の離婚の宣告」
そして、
話し合いの余地はなし。
一通の手紙と同封された離婚届で、あっという間に家庭崩壊です。
シャブだから、奥さんは見捨てたりしないだろう、と油断したのか？
今までの行いが蓄積して、とうとう奥さんが耐えきれなくなったのだろう。
でも、本人は「青天の霹靂」 そんなことはあり得ない、と言う。
まぁ、刑務所にブチ込まれても一緒にいてくれていただけで、奇跡なんだけどな。
夫婦も終わるときは手紙一通で宣告され、離婚届を送るだけ。
同情するつもりはさらさらないが、自慢の奥さんを失ったTさんは惨めだった。
その週末、舎房で考え込んだのだろうか？
月曜の朝、舎房から出て来ないのだ！。
すっかり落ち込んでしまい、気力を失ってしまったのだろう。
とは言うものの、ここは刑務所。ゴネて、作業に行かないという勝手は許されない。
このままだと
「出役拒否」という、よくある懲罰になってしまう。
30秒もゴネていれば、もうアウトである。
ただちに連行→懲罰行きだが、刑務官様は必死に説得した。
「おい、Tよぉ。悩むのはわかるが、とりあえず工場へ出てこい、なっ？」
刑務官様も、懲罰に送り出す方がメンドくさいと考えたらしい。
説得の甲斐あって、引きずり出されるように、ふて腐れてTさんは出て来た。
懲役たちは、シラケてしまい、同情ではなく勝手な行動をするTさんを非難した。
「あぁ～あ。奥さんの自慢してたのに、離婚されちゃ、メンツ丸つぶれか」
「普段カッコつけてるけど、出役拒否だよ、みっともなかったね」
「奥さんがいればいい、というワケじゃないね。いなくて良かった」
なんて、毎日が退屈で仕方がない懲役たちの格好の話のネタになったのである。
こんな離婚のエピソードは、刑務所生活で３回はお目にかかったモノ。
実は、そんなに珍しくはないんですよ
ある日突然、「離婚してくれ」と言われて、うろたえてしまう・・・
財産分与、慰謝料、養育費・・・そんな負担を考えると
独身だった方が良かったんじゃない？
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2015-07-01 17:00
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共通テーマ：日記・雑感
きりたんぽさん、こんにちわ！
またまた質問させて頂きたくてコメントします！
拘置所に送った手紙は、受取人が既に刑務所に移送されていた場合は、差出人の住所に戻されるのですか？
それとも、移送先の刑務所に届けられるのでしょうか？
もし分かったらでいいので、返信頂けると嬉しいです(^^)
来月から3日に1回更新になるとのこと…
更新以外にも、私のようなつまらない質問にも丁寧・迅速に答えて頂き、いつも感謝してます。
ありがとうございます！
無理なさらない程度に、ゆったり続けてくださいね(^^)
by miffy (2016-01-28 13:03)
miffyさん、こんにちは(^o^)
温かいお言葉、ありがとうございます。m(__)m
さてご質問の件です。
拘置所から刑務所に移送されてしまった場合、拘置所に出した手紙は転送されるのか？ということですが、これは２パターンでしょうか。
①事前に登録していない者からの手紙であれば、差出人に送り返されます。
②miffyさんのように事前に登録している者からの手紙は、刑務所に転送されます。
ただし、転送期間は１ヶ月程度のようです。
それだけの期間があれば、受刑者側からも手紙を出せますからね。
というワケで、恐らく大丈夫です。
困るのは「面会に行ったら、すでに刑務所に移送されていて、面会できなかった」というパターンですが、こればかりはどうしようもないですね。
本人に移送されたらサッサと手紙を送るよう、お願いしておくしかありません。
参考にしていただければ幸いです。
またコメントをお待ちしております。
いつもお読みくださり、感謝です。
by きりたんぽ (2016-01-28 13:54)
きりたんぽさん、コメ返ありがとうございました！
転送されると知れて安心しました(^^)
またいろいろ教えてください！
by miffy (2016-01-30 21:55)
初めてコメントさせていただきます。
元夫が一週間前に拘置所に入りました。手紙を書くために住所を書いたノートを持ち込みましたが、拘置所内に持ち込めるかどうかわからないと申していました。
いまだ元夫から手紙は来ていません。こちらから住所を書いた手紙を送ってあげるべきでしょうか？
by saki (2017-04-06 15:10)
sakiさん、はじめまして。
元夫が拘置所に入ったとのことですが、未決のうちは荷物の持ち込みはユルイですから、ノートは大丈夫です。
どのような事情かは分かりませんが、元夫がまだ手紙を送っていないという可能性が高いです。
これが既決（判決が確定し、懲役が開始）になり、刑務所に行くとガラっと変わります。
親族外登録をしていない人の住所や名前などをノートに書いてあると、刑務官の前で消去するよう求められます。
（ボールペンで見えなくなるまで線を引く）
もしくは領置し、出所まで見ることができません。
手紙を出すのは全然かまいませんから、気になるようであれば手紙を出すのがいいと思います。
by きりたんぽ (2017-04-06 22:56)
きりたんぽさん、ご丁寧なお返事をありがとうございました。元夫は上告までして、棄却されたので未決ではありません。長年夫婦をやっていたのですが、元夫の浮気による不信感から家庭内別居状態。事件発覚をきっかけに離婚を申し出ました。しかしながら表立って活動できない彼の代わりに色々と協力していくうちに彼に対する感謝の気持ちと女性としてまた接してくれた喜びから、やはりお互いにこの人しかいないという思いに、出会ってから初めてというくらいの安堵感を感じました。彼もそれは間違いないと思います。刑を終えて出てきたら一緒に暮らすつもりでした。拘置所に入る二週間前は遠距離を一生懸命通って会いに行きました。お金も彼のためにかなり援助しました。でも、拘置所に入る前夜に２人の女性からの待ってるからというラインがきて、寝込んでいる彼のラインの内容を読んでしまいました。私がいない隙の時間に彼の方から彼女らに会いたいと誘っている内容でした。彼が不安に押しつぶされそうな気持ちからだとは分かってあげたいとは思います。
だけど、のめりこんでいた私の感情がもろく崩れました。
拘置所にいる間、月二回は行こう。なるべく手紙を書こうと思っていた気持ちが冷めてしまいました。
だけど、きりたんぽさんのブログを見て、やはり余分な不安感を彼に与えるのも酷だと思い、入っている間しっかり考えて、出てきてから結論を出しても遅くないと思ったので、昨日手紙に連絡を取るべき人の住所を書き、月末に面会に行くと書いて送りました。
長文で失礼いたしました。
by saki (2017-04-07 12:13)
きりたんぽ様、初めまして。
ちょっとお訊きしたいのですが、受刑者側から離婚届を送るということは可能でしょうか？
例えば弁護士さんが差し入れの時に離婚届を渡して（これが出来るのかも分かりませんが）記入して、奥さんか旦那さんへ郵送、みたいなことを考えているのですが、可か不可かを教えて頂ければ幸いです。
小説を書いている知人から、上記の方法はあり得るのかの相談を受けたのですが、法学部出身でも分からんつーに！が本音だったりするものですから、ちょっとヘルプ的な質問をさせていただきました（ウザかったらスルーして下さい）。
by ケロ＊利穂 (2018-12-12 23:27)
ケロ＊利穂さん、はじめまして。
ご質問の件ですが、受刑者側から離婚届を送ることはできます。
実際に「妻から離婚届を送りつけられ、それに記入して送り返した」受刑者がいたことを覚えています。
by きりたんぽ (2018-12-13 18:57)
お礼が遅くなりまして申し訳ありません。
大変よく分かりました。
ご多忙のところご丁寧にお返事を下さりありがとうございます。
by ケロ＊＊利穂 (2019-04-30 15:11)